町田在住のライター&編集者の多田洋一さんが、「町田のちょっと懐かしい」を訪れ、今はなき店や出来事に思いをはせる、ゆるノスタルジー系連載。

♯029　中国料理「華正」、南大谷小田急線高架下アンダーパス、三菱化学生命科学研究所

こんにちは、多田洋一です。本に関わる仕事をしていて、町田市在住。さて、売れない時代のオフコースの昔話を続けてきて、前回は1979年の初頭に「愛を止めないで」がそこそこヒット、と書きましたが、いやぁ、世の中わからないものです。同じ年の12月に発売された「さよなら」が、グループの歴史を塗り替えるほどの大ヒット。過去の曲も聞かれるようになり、なんか、むかしからずっとメジャーだったような存在に。とくにお嬢様系女子が小田やんの絶叫ハイトーンに目をウルウルさせるようなことになっちゃって、そうなると、いろいろ悪口も言われるようになるわけで、タモリが「ネクラ（根が暗い）なニューミュージック」と、ずいぶんネタにしてたのを覚えています。そして私はというと、さすがにそんな状況で積極的に「好き」と言うのも憚られ、しばらく沈黙することに（レコードは買ってた）。

写真は南大谷の交差点。私は町田第三小学校～第一中学校なんですけれど、南大谷は近所ながら微妙に学区が違っていて知人も少なく、なんか、買い物（スーパーやドラッグストア）にいくところ、あるいは町田駅や玉川学園や成瀬方面にいくときに必ず通るところ、というイメージの町であります。スーパーのsanwaは数年前にできたばかりで、ええと、ここになにがあったのか、記憶が定かではないのが、不思議。でっ、玉川学園に向かう道を挟んだ向かい側には、たしかガソリンスタンドがあったはず。さらにその向かいのいまは歯医者になってるところが、少しまえまでコンビニエンスストアだったけれど、以前は酒屋さん。そしてその向かいの交番は昭和の時代から同じ建物？　町田ドライヴィングスクールは、名称が町田自動車教習所だったころに通いました。このあたり、飲食店がいくつかあったはずなんですけれど、ずっと営業しているのは、自家製のおしんこを出してくれる中国料理「華正」だけかな。私がこのコラムを書き始めて3年近くになりますが、一昨年6月には旭町の「翠華飯店」が、そして昨年7月には中町の「龍園」がなくなり..いわゆる〝町の中華屋さん〟の雰囲気を味わいたい人は、ぜひぜひ「華正」へ！

そしてもう１枚の写真は、南大谷から成瀬方面へ向かうさいに待ち構えている、交通の難所。なにか名前のついた場所なのかと調べてみたら、市のホームページでは「南大谷小田急線高架下アンダーパス」と書いてありました。ここ、チャリンコや徒歩で通ってたガキンチョのころから、ずっと狭くて暗くて危なっかしくて渋滞してて。今回調べてみたら国土交通省が「関東地域における道路冠水注意箇所マップ」で公表している都内135の該当箇所の134番目（町田市ではここだけ）でした。市は2017年から『冠水ガード君』という冠水警報表示システムを設置しているようで、あっ、写真の左下の黄色いやつですね。...そりゃ道をどーんと広くできれば問題解決なんでしょうが、しかし半世紀近く経っても改善されないんだから、いろいろむずかしいんだろうな。

難所を無事通過してさらに成瀬方面へと向かうと、人気の焼き肉店「むさし」、海老の天ぷらが立派な生蕎麦「やぶ広」 、そして長い上り坂。左手の奧のほうにはむかしIBMのプールがあって、子どものころになぜか親が連れていってくれたのだけれど...これも調べてみたら〈旧日本ＩＢＭグランド跡地対策協議会〉のホームページを見つけて...私が町田を離れていた時期、たまにこの道を通ると「高層マンション反対」という立て看板があった記憶も甦りました。そして、そのプールの道を挟んだ反対側には、むかしから「三菱化学生命科学研究所」という謎の施設があり、私はその名前から勝手にフランケンシュタインなどを想像して怖がる子どもでした。なんか、鬱蒼とした森のなかで、とんでもない研究がおこなわれているような。でっ、じつは後年（2003年）、ライターの仕事で同所を取材したときには、「ついに謎が解明できる」と内心ドキドキしたものです。そのときは「哺乳類の三分の一がする冬眠という生理機構を解明して人間の健康に役立てたい」という研究者のお話を伺ったのですが、その三菱化学生命科学研究所、2010年に解散となり、いまは日本大学の学生寮「バンデリアン町田」なのですね～。