文教地区・淵野辺にあるちょっと変わった食堂。入りやすそうでいて、鍵がかかっていてトビラが開かない。なぜ、こんな場所が誕生したか?「まちの不動産屋さん」2代目が、ここを舞台に巻き起こる人間模様を語る連載コラム。
淵野辺で創業43年となる不動産屋の二代目、池田峰です。日本で一番「味どう?」と聞いている不動産屋です。当社、東郊住宅社が運営する入居者向け食堂「トーコーキッチン」にまつわるエトセトラをお話しさせていただきます。
ある日、こんなつぶやきを見つけました。
短い言葉に想いを込めた様子がひしひしと伝わってきます。
彼はいったいどうしたというのでしょうか?
入居者向け食堂「トーコーキッチン」が産声をあげた2015年当時、郊外にあるまちの小さな不動産屋が入居者のために食堂を運営するということは、とても驚かれることでした。
不動産業のサイドビジネスとしてのレストラン経営ではなく、入居者サービスの一環として朝食を100円、昼食・夕食を500円で毎日提供するんだというと、さらに驚かれました。
「なんで不動産屋が賃貸物件入居者のために激安食堂!?」
驚きの反応からは、そんな心の声が漏れ聞こえてくるようでした。
そこで、先ほどのつぶやきです。
不動産ポータルサイト「SUUMO」でトーコーキッチンの取材記事が公開された2017年1月25日深夜のことです。まちの不動産屋がやっているという入居者向け食堂の存在を知り、いわゆる不動産屋でもなく、単なる食堂でもなく、「こういう不動産屋」をやってみたくなってしまった彼。自身に芽生えた想いを言葉にしたい願望がついに極限まで達し、そして、世の中に向けてつぶやいたのです。
それを見つけたボクは、すぐさま彼にこう返信しました。
「ありがとうございます。ぜひに!」
みなさんから「ありそうでなかった」と称されることが多いトーコーキッチン。そのためでしょうか、よくいただくご質問の一つが、「特許を取らないんですか?」です。
答えは「ノー」です。
むしろ、彼のように当社の取り組みに何かを見出してくださったり、賃貸×食堂というサービスの在り方を面白がってくださったりした方みなさんが、それぞれの想いや地域に応えたカタチの「トーコーキッチン」を各地で展開してくださったらうれしいなと思っています。
そして、「異端の」とか、「未来の」とか、「今までにない」と表現されたこの取り組みが、各地の賃貸生活をより楽しくする「普通の」選択肢になったらうれしいなと思っています。
当社は淵野辺エリアでの賃貸生活をもっと楽しく感じてもらえるよう、今、目の前にいる入居者のみなさん一人ひとりの笑顔を一つでも多く獲得し続けるための努力に専念します。
ところで、利用者が限定されているトーコーキッチンも販促活動するのでしょうか? やっぱり、スタンプカードを作って来店促進したりするのでしょうか?
答えは再び「ノー」です。
実は、そこにトーコーキッチンが望む関係性があるのです。
でも、それはまた別のお話。