文教地区・淵野辺にあるちょっと変わった食堂。入りやすそうでいて、鍵がかかっていてトビラが開かない。なぜ、こんな場所が誕生したか?「まちの不動産屋さん」2代目が、ここを舞台に巻き起こる人間模様を語る連載コラム。
淵野辺で創業45年となる不動産屋の二代目、池田峰です。日本で一番「味どう?」と聞いている不動産屋です。当社、東郊住宅社が運営する入居者向け食堂「トーコーキッチン」にまつわるエトセトラをお話しさせていただきます。
ある日、こんなつぶやきを見つけました。
トーコーキッチンのSNSフォロワーさんであろう様子がひしひしと伝わってきます。
彼女はいったいどうしたというのでしょうか?
トーコーキッチンはSNS(Twitter・Instagram・Facebook)を使って、1日2回、朝ごはんとなる100円の朝定食と、昼・夜ごはんとなる500円の日替わり定食のメニューを写真と共に投稿しています。
利用者である入居者のみなさんの多くは、SNSでメニューを確認→食べたい→ご来店という流れになるため、毎日毎日代わり映えしないメニューを投稿するわけにはいきません。「今日もトーコーキッチンでごはん食べるぞ!」と思ってもらえるよう献立を思案します。
そこで、先ほどのつぶやきです。
2019年6月22日。運営開始から3年半が経過したトーコーキッチンのSNSは、「どうやら入居者以外の方も多くご覧くださっているようだ」という話をよく耳にしていた頃のことです。今回のつぶやきの彼女もそのお一人なのでしょうか。自身のトーコーキッチンSNS活用法を告白したい願望がついに極限まで達し、そして、世の中に向けてつぶやいたのです。
それを見つけたボクは、すぐさま彼女にこう返信しました。
「毎日ご苦労様です。これからも献立の参考にしていただけるよう頑張ります!」
これは本当にうれしいつぶやきでした。こんな方法でトーコーキッチンのSNSを活用していただけるなんて。自分一人のためではなく、自分以外の家族みんなのことを考えて、毎日毎日献立を考え続けるのは、どれだけ大変なことでしょう。
ボクにも少しだけその気持ちがわかります。なぜなら、「今日もトーコーキッチンでごはん食べるぞ!」と入居者の皆さんに思ってもらえるようにメニューを開発しているからです。
オープン当初、トーコーキッチンのメニュー数は朝定食30種と日替わり定食30種でした。そこから、週替わり定食を設けたり、不人気メニューが姿を消したり、流行りの料理を加えてみたり、新たなメニューを開発したり……と増減を繰り返し、今や日替わり定食だけでもメニュー数は100以上。バラエティーに富んだメニュー構成が出来るようになりました。
その中で当然「圧倒的人気メニュー」から「そうでもないもの」に分類されるので、人気メニューだけで構成した「1ヶ月オールスター献立」を作るのは容易いのですが、そこは家族の健康も考えるが故に献立に悩むお母さんと一緒です。入居者の皆さんからの「おいしい!」という目先のリアクション欲しさだけで、メニューを構成しないように踏ん張っています。
ところで、「トーコーキッチン」という単語が日常会話に挙がるのは、やっぱり実際の利用者である入居者のみなさんだけなのでしょうか?
答えは「ノー」です。
実は、わたしたちにとって大きな励みとなった、ある一つのつぶやきに出会ったのです。
でも、それはまた別のお話。