文教地区・淵野辺にあるちょっと変わった食堂。入りやすそうでいて、鍵がかかっていてトビラが開かない。なぜ、こんな場所が誕生したか?「まちの不動産屋さん」2代目が、ここを舞台に巻き起こる人間模様を語る連載コラム。
淵野辺で創業45年となる不動産屋の二代目、池田峰です。日本で一番「味どう?」と聞いている不動産屋です。当社、東郊住宅社が運営する入居者向け食堂「トーコーキッチン」にまつわるエトセトラをお話しさせていただきます。
ある日、こんなつぶやきを見つけました。
トーコーキッチンを面白がってくださっている様子がひしひしと伝わってきます。
彼はいったいどうしたというのでしょうか?
2014年の暮れ。当社忘年会の席でのことでした。日頃の労をねぎらうべく、みんなでワイワイガヤガヤ話をしていると、突如として天からアイデアの神様が降りてきました。
「汝、入居者向けの食堂を運営せよ」
不動産屋は住む人の暮らしをより楽しくすることに携われる稀有な職業であり、「エンタメ業」だと思っているボクは、その年末年始休暇にトーコーキッチンの構想を開始しました。
そこで、先ほどのつぶやきです。
2019年2月6日。ビジネスニュースサイト「BUSINESS INSIDER JAPAN」にインタビュー記事が掲載された日のことです。ビジネスパーソン向けにトーコーキッチンのビジネスモデルや、その背景にある思考がフォーカスされた内容だったためでしょう。たくさんの方にご覧いただき、大きな反響をいただきました。
今回の彼もどうやら読んでくださったようです。自身が「良記事」と評した入居者向け食堂というサービスのありそうでなさ加減を伝えたい願望がついに極限まで達し、そして、世の中に向けてつぶやいたのです。
それを見つけたボクは、すぐさま彼にこう返信しました。
「最高の褒め言葉をありがとうございます!」
ありがたいことにトーコーキッチンの運営開始以降、様々な業界・分野から多くの方々が好意的に評してくださっています。その中で最もよく仰っていただくキーワードが「目から鱗」、「三方よし」、そして今回の「ありそうでなかった」です。
実際にトーコーキッチンのようなサービスが過去にあったのかなかったのかは未だにわかりません。しかし、アイデアの神様降臨以降、いろいろと頭を悩ませてシミュレーションし、丁寧にデザインしたトーコーキッチンのビジネスモデルを「ありそうでなかった」と評していただけることを本当にうれしく、心よりありがたく思っています。
存在している今の方がしっくりくるのに、なぜだか今まで存在しなかった。存在を知ったことにより、実はそれを求めていたんだということに初めて気が付くような、最も近くて、最も遠いもの。「ありそうでなかった」は、やはり最高級の褒め言葉です。
ところで、トーコーキッチンでの注文方法や配膳形式などの運営スタイルはどのように決めていったのでしょうか? ビジネスモデルのようにオリジナルばかりなのでしょうか?
答えは「ノー」です。
実は、そこにトーコーキッチンがどんな空間でありたいかという想いを込めているのです。
でも、それはまた別のお話。