文教地区・淵野辺にあるちょっと変わった食堂。入りやすそうでいて、鍵がかかっていてトビラが開かない。なぜ、こんな場所が誕生したか?「まちの不動産屋さん」2代目が、ここを舞台に巻き起こる人間模様を語る連載コラム。
#056「入居者の為に赤字の100円で朝食提供」
淵野辺で創業47年となる不動産屋の二代目、池田峰です。日本で一番「味どう?」と聞いている不動産屋です。当社、東郊住宅社が運営する入居者向け食堂「トーコーキッチン」にまつわるエトセトラをお話しさせていただきます。
ある日、こんなつぶやきを見つけました。
100円朝食の仕組みに共感してくれている様子がひしひしと伝わってきます。
彼はいったいどうしたというのでしょうか?
わたしたち東郊住宅社が淵野辺周辺で管理する1,800室の賃貸物件にお住まいのみなさんに利便性と健康的な食生活を提供するための食堂として誕生したトーコーキッチン。朝の定食が100円、昼・夜の定食が500円で提供されています。
入居者サービスの一環なので、東郊住宅社としては食堂で出た利益は放棄し、食材と人件費にすべて再投資しています。つまり、みんなが食べれば食べるほどごはんがおいしくなり、みんなが食べれば食べるほど働くスタッフの笑顔が増える仕組みになっています。
そこで、先ほどのつぶやきです。
2022年1月23日午後7:40。テレビ朝日系列「ナニコレ珍百景」でトーコーキッチンが紹介された直後のことです。番組でトーコーキッチンのことを知った彼はその仕組みに賛同の意を唱えたい願望がついに極限まで達し、そして、世の中に向けてつぶやいたのです。
それを見つけたボクは、すぐさま彼にこう返信しました。
「うれしいツイートをありがとうございます。不動産屋冥利に尽きます!」
トーコーキッチンの仕組みが上手く伝わっていないときによく聞かれるのが、「運営費を家賃に転嫁しているのですか?」という質問です。
答えは「ノー」です。
家賃は物件オーナー、つまり大家さんの収入です。わたしたち管理会社はそこから数%の管理料という報酬をいただいています。そのため、仮に家賃を1万円上げたとしても、そこから得られるわたしたちの利益は数百円です。とても食堂の運営費には及びません。それに、そもそも相場より家賃が1万円も高い部屋になんて、誰も住みたいと思いません。だから、家賃に転嫁する仕組みは成立しないのです。入居者も、オーナーも、そして、わたしたち管理会社も喜ばしい結果を得られないからです。
そこで思いついたのが、トーコーキッチンの仕組みです。わたしたち管理会社の業務は、そこに住まう人たちの生活をより楽しいものにすることに携われる稀有な仕事です。その特性を生かし、まずは入居者が喜んでくれるサービスを提供すれば入居者は自然と多く集まり、入居者が集って満室になればオーナーが喜ぶ収入となり、そして最後にわたしたち管理会社がそこから得る管理料が結果として増えるという仕組みにしたのです。
ところで、実際にトーコーキッチンを利用する際は何か事前に特別な段取りが必要なのでしょうか? やっぱり予約や前払いが必要なのでしょうか?
答えはこちらも「ノー」です。
実は、そこにわたしたちの不動産屋としての思いがさらに込められているのです。
でも、それはまた別のお話。