
多摩美術大学は現在、数年後の開館を目指す新施設(町田市小山ヶ丘6)で、企画展「EXPLOSION & EXPANSION 爆発と拡張 多摩美術大学の制作の現場から」を開いている。
暫定的に「BLUE CUBE(ブルーキューブ)」と呼ばれる同施設は、元スーパーマーケット「メトロ」の店舗跡を利用。同大学の新美術館も複合施設の一部として入る予定。
同施設初の一般公開となる同展は、元スーパーの空間をそのまま生かすという「スーパーの遺産(レガシー)との共存」をコンセプトを企画の核とした。通常の美術館(ホワイトキューブ)とは異なり、空調や照明が不十分で温湿度の管理が難しいという、「不便さ」を逆手に取り、新進気鋭の現役学生・助手らが作品展示に活用している。
例えば、冷凍・冷蔵ケースはそのまま展示台として転用され、肉や魚の売り場の看板といった設備も撤去されず、作家によってコンセプトや作品の一部として昇華された。これは、ニュートラルな空間では不可能だった、「今この場所でしか成立し得ない」ユニークな展示となっている。
新美術館の立地は、多摩センター駅周辺にあった旧美術館より一般客には不便となるものの、大学キャンパスに近接することで学生の利用促進を図る。さらに、世界的な美術館の定義にもある「コミュニティとの密接な関係性」を重視し、今後は周辺の学校や地域との連携を深めていく方針だという。
ブルーキューブは今後、美術館を含む複合施設として改修される計画だが、建物全体を取り壊すのではなく、元のスーパーの建物を生かしながら美術館にふさわしいクオリティーを付加していく方向性が有力視されている。
多摩美術大学美術館館長の大島徹也芸術学科教授は「今回の試みは、非伝統的な空間での美術表現の可能性を探るとともに、将来の美術館の方向性や、地域住民・学内関係者にそのポテンシャルを示す重要な一歩」と話す。
開催時間は12時~17時(11月1日~3日は10時30分~)。月曜休館。入場無料。11月3日まで。