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J3第13節 町田vs山口 マッチレポート

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「現」vs「元」ゼルビア戦士が激突

 岸田和人と庄司悦大が野津田に帰還するーー。かつての仲間とのピッチ上での再会も、勝負となれば話は別だった。

 2012年にFC町田ゼルビアへ新卒で加入した町田のエース・鈴木孝司とレノファ山口MF庄司は同期加入。町田時代、二人は公私ともに仲が良かったが、「いまは敵なので」(鈴木孝)と、お互いに事前に連絡を取ることはなかったという。

 第12節終了時点で7得点を奪っている山口のストライカー・岸田は、鈴木孝と秋田豊監督時代にFWのレギュラーポジションを争った仲。「特にライバル心はない。カズ(岸田)がゴールを取っているのは何か違うものを持っているのかなと。素直にすごいなと思う」と目下5得点の鈴木孝は平常心を装っていた。しかし、チームのことに触れると「相手よりも1点でも多く取ることが大事」と、ゴール奪取を誓っていた。

 「優勝してのJ2昇格を目指す」(鈴木崇)町田が、首位・山口を追撃できるか。そうした昇格争いの焦点とは別に、現ゼルビア戦士と元ゼルビア戦士のプライドが激突する一戦が幕を開けた。

接戦を制したのは…

 [4-1-4-1]のアンカーといわれるポジションに入った庄司は、長短のパスを織り交ぜながら、パスワークが生命線である山口で「チームの心臓」(山口・上野展裕監督)としての重責を担った。局面を一気に打開する低くて鋭いグラウンダーのパスが町田の急所をえぐり、左右に繰り出すサイドチェンジのパスで相手を揺さぶっていく。40分には庄司が矢のような縦パスを岸田に通し、カウンターのチャンスになりかけるなど、庄司→岸田の“ホットライン”が町田を脅かした。

 しかし、先手を奪ったのはホームの町田だった。後半開始早々の47分、CK崩れの展開から鈴木孝、リ・ハンジェ、大竹隆人とつなぎ、最後は鈴木崇文が強烈な左足シュートを叩き込んだ。

 追いかける展開となった山口は、66分に増田繁人とGK高原寿康の連係ミスを岸田が突いたものの、肝心のフィニッシュまでは至らない。しかも、岸田はGKと交錯したこの場面で足を負傷してしまう。しかし、負傷した山口の背番号9は、75分にピッチを退くまで、足をひきずりながらも懸命にディフェンスラインの裏を突く動きを見せていた。

 そして、岸田が退いたピッチに残った庄司は、終盤には前めのポジションを取りながら相手ゴールに迫る。しかし、1点が遠かった。

元ゼルビア戦士の活躍

 試合後の会見で、山口の上野監督が古巣戦となった岸田と庄司について触れた

 「今日は町田出身の庄司、岸田も悔しい思いをしたと思う」

 さらに、記者から二人の役割とここまでのプレーに対する評価を問われると、「岸田も庄司もよくやってくれていると思う」と前置きしながらも、指揮官の期待値の高さからか、その答えは細部にわたっていた。

 「岸田は得点力を一番求めている。最後の決定力の部分は高めないといけないし、至近距離でのシュートを決められるようになればいい。GKに当てた場面もあったが、至近距離でのシュートを決められるようになると、もっとゴールを量産できると思うし、そういう練習もしている。また、庄司についてはボールを配給して、チームの心臓になってくれている。ただもう少し前のほうで彼のプレーをできれば、もっと相手陣地に押し込めるし、もっと彼の良さが出ると思っている」

 一巡目を終えた第1クールを10勝2敗で駆け抜けた首位・山口が、今後も上位にとどまるためには二人の力が必要なのだろう。町田を去った二人はいま、J3新参者の山口で確固たる地位を築こうとしている。

再戦へ

 足をひきずりながら岸田がスタジアムをあとにしたのち、ひとしきり、元チームメートとの再会の挨拶を終えた庄司がミックスゾーンに現れた。2014年10月12日の第28節・ツエーゲン金沢戦以来となる町田市立陸上競技場のピッチでの試合を終えた山口の背番号44は、久しぶりの野津田でのプレーに対しても、「懐かしいなとは思ったけど、リラックスして臨めた」と振り返る。そして、山口で「町田でもプレーしたかった」というアンカーのポジションを与えられている庄司は、「得意なポジションだし、自分が生きるポジションでもある」居場所で充実感を覚えながら、首位チームを中盤の底辺から支えている。

 「自分たちのやりたいサッカーをやれば勝てると分かっている。それをできれば今シーズンも良い順位で終われると思う」

 揺るぎない自信を口にするスタンスは、町田在籍時代の庄司のそれと何ら変わらなかった。

 二人との次なる再会は、6月14日(日)第16節、下関での山口のホームゲーム。“初戦”では沈黙した岸田と庄司が、このまま黙っているはずがない。

【郡司聡プロフィール】
編集者・ライター。サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の編集部勤務を経て、現在はフリーの編集者・ライターとして、サッカー中心の取材活動を行う。ゼルビアは2010年の天皇杯・東京V戦ごろから取材を始め、J2に昇格した2012年より本格的に取材活動を始めた。この3月、ゼルビアを中心としたWebマガジン『町田日和』を立ち上げた。

【記事提供 キープ・ウィルダイニング】
レストラン・カフェ経営、アーティスト・アスリート支援プロジェクト、イベント企画運営、地場プロデュースなどをマチサガ(町田・相模原)エリアで展開。街の価値を発見・発掘し、ブランディングすることをミッションに掲げる。
http://www.keepwill.com/top/

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