文教地区・淵野辺にあるちょっと変わった食堂。入りやすそうでいて、鍵がかかっていてトビラが開かない。なぜ、こんな場所が誕生したか?「まちの不動産屋さん」2代目が、ここを舞台に巻き起こる人間模様を語る連載コラム。
淵野辺で創業43年となる不動産屋の二代目、池田峰です。日本で一番「味どう?」と聞いている不動産屋です。当社、東郊住宅社が運営する入居者向け食堂「トーコーキッチン」にまつわるエトセトラをお話しさせていただきます。
ある日、こんなつぶやきを見つけました。
すでに十二分頑張っている様子がひしひしと伝わってきます。
彼女はいったいどうしたというのでしょうか?
そもそもは、進学にともなうお部屋探しで地方から来られたご家族の中で「新生活では食事のことが一番の心配」という声が年々増えているのを感じ、その一助になればと、入居者サービスとして食堂を運営することを着想しました。次に、すでに入居者であるみなさんの顔を思い浮かべてみると、ここ数年、単身高齢者が増えてきていることに気が付きました。
そして、さらに思いを馳せてみると、共働き世帯の増加に伴って、働く女性も同様に増えていることに気が付いたのです。
そこで、先ほどのつぶやきです。
2017年1月28日。東洋経済オンラインでトーコーキッチンの取材記事が掲載された日のことです。トーコーキッチンのような日々の手助けとなるサービスの存在を求める願望がついに極限まで達し、そして、世の中に向けてつぶやいたのです。
それを見つけたボクは、すぐさま彼女にこう返信しました。
「毎日、本当にご苦労さまです。トーコーキッチンの在り方をより多くの方に面白がっていただき、同じようなサービスを始めてくださる方が現れたらうれしいなと思っています!」
時代は変わり、家族の在り方も働き方も様々です。働きながら家事をするのがいかに大変かはたやすく想像できます。先述の共働き世帯に加え、仕事に家事に育児にと、そのすべてを一人でこなす働くお母さんやシングルマザーも増えています。仕事・家事・育児を一人きりで担うのはあまりに大変です。そのいずれか一つを担うだけでもう十分大変なのですから。
そうだとすると、住まいとそこでの暮らしに携わる側として何かお役に立てることはないだろうか? もしかしたら、気軽に利用できる食事サービスがあったら一助となれるのではないだろうか? 自室以外にある第三の場所として、有意義にご活用いただけるのではないだろうか?
そう思い、トーコーキッチンは実現に向けていっそう加速していきました。
例えば、保育園のお迎え帰りに「今日さぁ、ママ疲れちゃったから、夜ごはんトーコーキッチンでいい?」なんて言ってもらえたらうれしいなと、そんなシーンを思い浮かべながら、子ども用食事メニューを作り、食器や絵本を揃え、ハイチェアを2脚用意しました。
うれしいことに今では、お迎え帰りにお子さんと立ち寄ってくださる方が何人もいます。お子さんを朝送り出してから自身が出勤するまでの大切な「自分一人の時間」に充ててくださる方もいます。ママ友たちとのランチ会で定期的に利用してくださる方もいます。仕事帰りや週末のリフレッシュ方法として活用してくださる方もいます。
ところで、そうするとなるとトーコーキッチンは学生さん、単身高齢のみなさん、そして、働く女性にだけ役立つサービスとして利用されているのでしょうか?
答えは「ノー」です。
実は、そこにトーコーキッチンが入居者サービスとして実現したことによってわたしたちも初めて気が付いた、その先の利用者の存在があったのです。
でも、それはまた別のお話。