文教地区・淵野辺にあるちょっと変わった食堂。入りやすそうでいて、鍵がかかっていてトビラが開かない。なぜ、こんな場所が誕生したか?「まちの不動産屋さん」2代目が、ここを舞台に巻き起こる人間模様を語る連載コラム。
#034「それでその日の食事送って(高確率でトーコーキッチンだが)」
淵野辺で創業45年となる不動産屋の二代目、池田峰です。日本で一番「味どう?」と聞いている不動産屋です。当社、東郊住宅社が運営する入居者向け食堂「トーコーキッチン」にまつわるエトセトラをお話しさせていただきます。
ある日、こんなつぶやきを見つけました。
トーコーキッチンの常連さんであろう様子がひしひしと伝わってきます。
彼女はいったいどうしたというのでしょうか?
トーコーキッチンはSNSを使って、1日2回、朝ごはんと昼・夜ごはんとなる日替わり定食のメニューを写真と共に発信しています。利用者である入居者のみなさんはそれでメニューを確認し、食べたいと思ったときに来店し、その都度料金を支払い、食事をしています。
それゆえ、実際にご来店いただけるかどうかは、どれだけ食べたいと思っていただけるかどうか次第。つまり毎食が真剣勝負です。少しでも多くの方にご来店いただけるようにと、魅力的なメニューを開発したり、写真の撮り方を勉強したりと企業努力を積み重ねています。
そこで、先ほどのつぶやきです。
2016年5月23日。前年末に誕生したトーコーキッチンが入居者のみなさんと共に初めて迎えた春が終わりを告げ、次の季節へと移ろいゆく頃のことです。
不案内な土地へと羽ばたいた側と、それを離れて見守り続ける側。互いに新しい生活に少しは慣れつつも、それぞれが胸に秘める想いは募り、ついつい不器用に相手の様子を探ってしまう時期なのかもしれません。
それを十分理解している彼女。母親の愛を反芻したい願望がついに極限まで達し、そして、世の中に向けてつぶやいたのです。
それを見つけたボクは、すぐさま彼女にこう返信しました。
「ナイスSNS活用法!」
実はこれが、SNSで毎日毎食のメニューを写真と共に投稿し続ける意義を初めて気が付かせてくれた出来事でした。単なるメニューを告知する媒体としてだけでなく、離れて暮らす家族の安心にもつながる媒体としての意義もあることを。
そう思い、入居者のみなさんに実情を聞いてみてビックリ。
家族から「今日、あんたの好物だよ! 食べた?」「今日の定食のお肉、どんな味だったの?」なんて連絡が来たり、自分から「今日の晩御飯はこれ!」「豚汁でお母さんの味を思い出しちゃったよ」なんて報告したりと、トーコーキッチンのSNSを離れて暮らす家族とのコミュニケーションツールとして有効活用してくれている人が大勢いることが判明したのです。
ところで、トーコーキッチンが毎日SNSで投稿するメニューの写真を見ているのは、実際の利用者である入居者のみなさんだけなのでしょうか?
答えは「ノー」です。
実は、そこにわたしたちの想像をもう一段階超えたSNSの有効活用法があったのです。
でも、それはまた別のお話。