文教地区・淵野辺にあるちょっと変わった食堂。入りやすそうでいて、鍵がかかっていてトビラが開かない。なぜ、こんな場所が誕生したか?「まちの不動産屋さん」2代目が、ここを舞台に巻き起こる人間模様を語る連載コラム。
淵野辺で創業45年となる不動産屋の二代目、池田峰です。日本で一番「味どう?」と聞いている不動産屋です。当社、東郊住宅社が運営する入居者向け食堂「トーコーキッチン」にまつわるエトセトラをお話しさせていただきます。
ある日、こんなつぶやきを見つけました。
トーコーキッチンには来てくれない様子がひしひしと伝わってきます。彼はいったいどうしたというのでしょうか?
暮れも押し迫った2015年12月27日。トーコーキッチンは、わたしたちが管理する1,600室の賃貸物件に入居しているみなさんのための特別な食堂として、淵野辺駅北口にある商店街の一角でひっそりと産声をあげました。
あくまでも当社が行う入居者サービスの一環として入居者向けに運営する食堂ですので、どんな店なのかがお店の外から一見してわかるような看板の類は特に設置していません。また、いわゆる一般的な集客も知名度UPも不要なため、広告宣伝の類もしていません。
そこで、先ほどのつぶやきです。
2018年3月27日。運営開始から2年経過したトーコーキッチンは少しずつその存在を知ってもらえるようになり、「どうやら入居者以外の方も『トーコーキッチン』と固有名詞で呼んでくださっているようだ」という話をよく耳にしていた頃のことです。
今回のつぶやきの彼もそのお一人なのでしょうか。知人と正確に情報を共有したい願望がついに極限まで達し、そして、世の中に向けてつぶやいたのです。
それを見つけたボクは、すぐさま彼にこう返信しました。
「次回はぜひ“あれ”の近くのトーコーキッチンにお立ち寄りください!」
本当にうれしいつぶやきでした。場所を連想させる目印にトーコーキッチンが使われるなんて。自分だけではなく相手も当然知っている、そんな「共通認識」が「情報共有」を成り立たせてくれます。彼も、彼の知人も、トーコーキッチンを知ってくれているのでしょう。
“あれ”がどこのことなのかは不明ですが、“あれ”の近くに存在する目印となるもので、彼らにとって最も共有しやすいものがトーコーキッチンだったという事実は、運営開始からまだ2年しか経過していなかった当時のわたしたちを励まし、勇気づけてくれました。
それは、淵野辺の商店街の一角でひっそりと誕生した、ちょっと変わった「入居者向け食堂」が広く知ってもらえて、そして、その存在を認めてもらえたような気がしたからでした。
ところで、トーコーキッチンに寄せられる要望には一体どんなものがあるのでしょう? やはり食事に関することばかりなのでしょうか?
答えは「ノー」です。
実は、わたしたちには思いも寄らなかった、ある要望が寄せられたのです。
でも、それはまた別のお話。