文教地区・淵野辺にあるちょっと変わった食堂。入りやすそうでいて、鍵がかかっていてトビラが開かない。なぜ、こんな場所が誕生したか?「まちの不動産屋さん」2代目が、ここを舞台に巻き起こる人間模様を語る連載コラム。
淵野辺で創業46年となる不動産屋の二代目、池田峰です。日本で一番「味どう?」と聞いている不動産屋です。当社、東郊住宅社が運営する入居者向け食堂「トーコーキッチン」にまつわるエトセトラをお話しさせていただきます。
ある日、こんなつぶやきを見つけました。
右手が力強く挙げられている様子がひしひしと伝わってきます。
彼女はいったいどうしたというのでしょうか?
朝食100円、昼・夕食500円で食べられるトーコーキッチンはわたしたち東郊住宅社が管理する1,800室の賃貸物件入居者のための特別な食堂ですが、入居者が同行すれば、いつでも、何人でも、何回でも一緒にトーコーキッチンをご利用いただけるという特例があります。
この特例を知って、周囲に東郊住宅社の物件に入居している人を探してトーコーキッチンに来店するケースもあれば、入居者自らが周囲に声をかけてトーコーキッチンへと誘うケースもあります。
そこで、先ほどのつぶやきです。
2019年8月6日。当コラム「トーコーキッチン物語」の第13話が相模原町田経済新聞で更新された日の夜のことです。友人のつぶやきでトーコーキッチンのコラムが触れられていたのでしょうか。それとも、友人とのやりとりの中でトーコーキッチンが話題に上ったのでしょうか。自身とトーコーキッチンの関係を表明したい願望がついに極限まで達し、そして、友人に向けてつぶやいたのです。
それを見つけたボクは、すぐさま彼女にこう返信しました。
「ナイス挙手!」
SNSを初めとしたインターネット上でのこのようなやりとりの全てを把握することは難しく、趣味のエゴサーチで見つけられる範囲でしかないのですが、トーコーキッチンを誇らしく語ってくれている入居者のものとおぼしきコメントを見ると、本当にうれしくなります。
そして、このようにトーコーキッチンの利用に関する特例を有効に使ってくれている様子を垣間見る度に、「もしかしたら、トーコーキッチンが存在することによって、みんなの淵野辺生活が少しでもより面白いものになっているかもしれない」と、小さなまちの小さな不動産屋である自分たちの存在意義や価値を認めてもらえているかのように感じられ、非常にうれしくなるのです。
わたしたちの仕事である不動産業というのは、そこに住む人の暮らしをより楽しくすることに携われる稀有な仕事です。それゆえ、いつの日か「淵野辺に住んでよかった」「昔、淵野辺に住んでいたときに、こんな食堂があってね。アレおいしかったなー」なんて、愛着を持って淵野辺での暮らしを振り返ってもらえたら、不動産屋冥利に尽きるだろうなと思い、今日もトーコーキッチンを運営しています。
ところで、入居者以外の利用者はどうやって東郊住宅社の管理物件入居者を見つけるのでしょうか? やっぱり今回のように声をかけてもらうのを待っているのでしょうか?
答えは「ノー」です。
実は、わたしたちが想像もしなかった積極的な展開があったのです。
でも、それはまた別のお話。