有機栽培に取り組む日本の農家は0.4%と、ヨーロッパ(40%以上)に較べて圧倒的に少ない。町田市小山町で、遊休農地を活用した無農薬野菜の栽培に取り組む「おおるりファーム」の青木瑠璃さんが、日々の奮闘と収穫の喜びを伝える連載コラム。
台風が去って、おおるりファームにも多少の損害がありました。折れた万願寺唐辛子を立て直したり、モロヘイヤや紫蘇、ササゲもかなり倒れてしまいました。今回は列島を横断していますので、これからまた、野菜が高くなりそうです。農薬等の問題より、そもそも自然災害により野菜の生産が難しくなる日が来ないことを祈るばかりです。
今回は、種を取ること、自家採種がどんなに面白いかについて共有できたらと思います。
自家採種とは、野菜の花が咲くまで待ってその種を取り、次回に撒くことです。これは簡単ですね!ところが、今現在の農家は次々と仕事があり、自家採種する時間も勿体ないので、種は種屋さんから買う、ということが主流になっています。畑を効率よく使うためには種取りをするより、新しい作物を植えた方が良いということになります。
例えば人参では、8月に蒔いた種は11月から2月に収穫期を迎えます。そのまま余った人参を置いておきますと、5月頃に花が咲き、7月には種が出来ます。この種を撒きますと、また秋作の人参を作ることが出来ます。この文章に間違ったことが一つもないのに、農家はなぜそのようにしないのか?一つには畑をフルに活用するためには種取りをしていると、次の野菜が作付け出来ないからという理由です。そんなことをしているより、早く畑を片付けて次の野菜を作り儲けようということです。
私は弱小農家で、そのような効率を否定する立場ではないことは重々承知していますが、それでも種取りは面白い、ということがわかりました。大規模であればあるほど種って本当は高いんです!種苗会社が活躍する前は、日本の農家も皆種取りをしていました。私が農業を始めることを、知り合いのおばあちゃんにいうと、「それなら、近所の農家から種をもらったらいいよ。」と言われました。残念ながら、そのような種をくださる農家は日本には今現在ほとんど存在しません。
なぜ、農家は代々受け継がれる種を取ることをやめたのか?その理由の最大のものは種苗会社の努力によるF1品種の開発でした。今までの品種より格段に収量が増える、病気に強い、それは農業における革命でした。F1の種を蒔いた方がより儲かる、病気にもかからないので収益が上がる!!!
そうして、日本の野菜農家は種取りをすることをやめてしまいました。
F1は本当に素晴らしい技術だと思いますが、私が有機栽培をしていて思うことは、F1は収量は規定どうりに行えば上がりますが、農薬と化学肥料を規定量使わないとなかなか生産が難しい品種なのではないかと思います。美しく綺麗で揃った野菜を短期間に収穫できる。そのような理想の元に開発された品種だからです。
種取りにつきまして、おおるりファームでは可能な限り種取りを進めています。それとともに、新品種の開発もしています。種取りの面白いところは、年々畑にあった強く美味しい品種が生まれることです。今年できました新品種は、白いゴーヤと緑のゴーヤの交配種、薄い緑のゴーヤ、丸い白ナスと長い薄紫のナスからできた、丸くて長い薄紫のナス(写真)、紫小松菜です。これが種取りして来年も同じものができれば、固定種となります。
下は紫なす、真ん中が白なす、今年新しく出来た品種が上の大紫なすです
なぜ、現在の農家が種取りができないのか?作付けに追われ考える暇なく種苗会社の進める品種のみ植え付けるのか?は一考に値すると思います。例えば、ナスですと日本のシェアの90?パーセントが千両2号という品種です。たくさんなり、大きさを揃えて出荷できるからです。一方世界には100種類ものナスがあります。箱に入りやすいからという理由で、日本で流通する品種が主に1種類なのはとても残念な気がします。
種って本当に高いんですよ~~~。皆が少しずつでも種取したら、すごい量になるのに。
以前F1の小松菜の種を取り、蒔いた時はびっくりでしたよ!何と20種類くらいのバラバラの遺伝子の葉っぱができました。種を取って撒く機会がありましたら是非お試しください。F1は種取できないというのはありません。そこからお気に入りの品種を探すこともできます。
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