学生数の減少により賃貸住宅の空室が増えつつある淵野辺エリアで、入居者向けのサービス「トーコーキッチン」(相模原市中央区淵野辺3、TEL 042-707-0370)が昨年末に始まった。
トーコーキッチンは、地域密着の不動産会社「東郊住宅社」(共和1)が管理する賃貸住宅の入居者しか利用できない食堂。外観は街に開かれたガラス張りのオシャレなカフェテリアだが、住宅と共用の鍵がないと入れない。メニューは、朝食100円、昼食・夕食500円~の日替わり定食がメイン。利益は食材に還元するため、食べてもらえばもっとおいしくなるという。
同社は、青山学院大学、麻布大学、桜美林大学が集まる淵野辺で、学生向けワンルーム中心に1600戸を管理する。10年ほど前から礼金・敷金ゼロ、退出時の修繕義務なしで実績を上げてきたが、近年、同様の取り組みをする会社が増えつつあり、差別化ができなくなっているという。さらに、青山学院大学の文系学部が青山キャンパスに移転したことで学生数が大幅に減少。空き家の増加に伴い、賃料が2万円台まで下がった物件もある。
「空室対策として、部屋を魅力的にするリノベーションや家具の充実などがあるが、費用がかかるため、オーナーの判断による。そうではない方法で資産価値を高める、長く住んでもらって空室をなくすことができないかと考えた」と同社二代目の池田峰さん。
食事を提供する学生マンションへのニーズの高まりを感じつつ、きめ細やかなサービスで入居者と付き合い、「同社があるから淵野辺に住む」と思ってもらえるようなファンを作りたいと始めたのが同サービス。「一人暮らしの学生と親にとっては安心の提供になる。一緒に食べることですぐに仲良くなれる」
オープンして4カ月。新年度がはじまって利用者は増えつつあり、現在、1日の利用者は平均80人。トーコーキッチンに近いことを理由に部屋を決める人も出ているという。「入居の決め手をアンケート調査したところ、今年は礼金・敷金ゼロよりも食堂の存在が大きかった。食堂があることで外食が減り、安心できる食事が提供されるなら家賃が5,000円高くなってもいいという親もいた」。
「会社は線路を挟んだ向こう側にあるが、1日3回は食堂にやって来る。近いうちにWi-Fiを導入し、入居者にはここで勉強してもらってもいいと考えている。私もここで仕事するかも」と池田さん。「IT化で希薄になりつつある、大家・入居者・管理会社の関係をもっとフレンドリーにしていきたい」とも。