相模原の町外れに突如出現したレトロ自販機コーナー(相模原市南区下溝)が話題を呼び、連日、大勢の人が懐かしさを求めて訪れている。
数十年前にドライブインやボウリング場などに設置されていた「レトロ自販機」。コミカルな商品イラストが描かれていたり、タワークレーンのような動きで商品を選べたり、注文を受けてから自販機内の機械が調理するなどして、味わいがある。
よみがえらせたのは同地でタイヤとホイールの販売などを手掛ける「中古タイヤ市場」の斉藤辰洋社長。「自販機の中が、どのように動いているのか興味があった」と、長い間使われていなかったボロボロの自販機を全国から買い集めていた。
自販機は、製造メーカーがすでに廃業していたり、自販機で販売する商品が製造されていなかったりするものばかり。機械の修理にとどまらず、デジタル表示器をニキシー管に入れ替えるなどオリジナルデザインを再現。手に入らない商品は、食品メーカーへの特注や自社の飲食店で製造して代用。修理した自販機で、うまく提供できるかの調整を繰り返したという。
レトロ自販機での販売を始めたきっかけは、「タイヤ交換の待ち時間に楽しんでほしい」と昨年11月に設置した給湯器付きのカップラーメン自販機。好評だったため、4月末にラインアップを充実させた。
うどん・そば、ラーメン、ハンバーガー、トースト、ポップコーンなど調理機能が付いた自販機のほか、ご当地アイス、ポッキー、駄菓子、玩具付きお菓子、焼き鳥などのビッグ缶、瓶コーラ、タイの清涼飲料水など、テーマに分けて計27台を店舗の一角に設けた仮設小屋に並べる。駄菓子の自販機は、同じ商品が並ばないように工夫。選ぶ楽しさを演出するため、10円~30円の商品を売るために手間をかける。
「予想外の反響に驚いている」と斉藤社長。「子どもからお年寄りまで幅広い人が買いに来てくれる」と笑顔を見せる。本業よりも自販機に力を入れてしまうという社長に対し、従業員は「ほしい自販機が見つかると、社長はすぐに買い付けに出かけてしまう。止めても、本業の仕事をしなくなるので、今は止めないようにしている」と明かすも、「多くの人に喜んでもらえて、楽しい話題ができた」と理解を示す。
斉藤社長は「壊れやすいため、稼働中でもチェックが欠かせない。せっかく俺のところに来たものは生かしてあげたい」と自販機への愛を語る。今後もレトロ自販機を増やす予定だという。
自販機コーナーは24時間営業。防犯上の理由から両替機は設置していないが、中古タイヤ市場の営業中は両替を受け付ける。