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インディーズ文芸創作誌「ウィッチンケア」創刊10年 町田在住の編集者が発行

ウィッチンケアを発行する多田さん

ウィッチンケアを発行する多田さん

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 インディース文芸創作誌「ウィッチンケア」第10号が4月1日に発行される。

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 同誌は2010年に創刊し、年に1冊のペースで続けてきた。発行人の多田洋一さんは町田育ち。雑誌ライターを経て、「踊る走査線」や「ごくせん」「めちゃイケ」など人気ドラマやテレビ・映画の脚本を小説にするノベライズを手掛けている。

 創刊のきっかけについて、多田さんは「いつも人から頼まれて書いてきたので、誰にも頼まれないことを書きたいと思った。でも、無名作家が一人で作品を発表してもだれも読んでくれないから、他の人にも書いてもらえればと思った」と明かす。

 J文学ブームが一段落し、文芸賞を受賞した新人作家の本が売れるという流れがなくなった背景もあった。誌名は英国バンド「プリファブ・スプラウト」所属レコード会社名のアナグラム造語。

 第1号は、草の根BBS「ぱらねも」の知り合いなどの寄稿で500部発行。書店との直接取引で販売した。1000部発行の第2号は東日本大震災の影響で配本できなくなるところを、取次会社の好意によりISBN(国際標準図書番号)を取得。全国の書店に流通できるようになった。

 3号で寄稿者が増え、フィクションとノンフィクションを分け隔てなく掲載し、「誰が書いているか」よりも「誰が何を書いているか」に重点を置くなど、雑誌としての形が完成し、現在に至るという。

 これまでの寄稿者は、神田ぱん、我妻俊樹、武田徹、かとうちあき、仲俣暁生、長谷川町蔵、柳瀬博一、辻本力、野村佑香、朝井麻由美、美馬亜貴子、西田亮介(敬称略)など、様々なプロフィールを持つ91人。町田に関係ある執筆者も多く、実在店舗や国道16号などが登場する作品が度々掲載される。「私の育った環境のせいか、西東京っぽい作品が多い。なにかあっても終電で帰れるような、地方出身者のように弾けきれない感じ」

 執筆者に原稿料は払わない。「本業でできないことをやってほしいと依頼している。決め手は歴代の執筆者リストで、『こんな人も書いている』ということで納得してもらっている」

 「業界に長く関わってきたので、本の作り方は知っている。1冊の制作実費は約30万円。毎月の小遣いを節約すればできる。スポンサーからなにか言われるのが嫌なので、広告は入れない」と多田さん。

 「創刊当時、こんなにも紙文化がなくなるとは思わなかった。同じような取り組みを続けているのは辻本さんの『生活考察』。とにかく手にとって読んでほしい」とアピールする。

 価格は1,000円(税別)。町田市内では久美堂書店、TSUTAYA 町田木曽店などで取り扱う。

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