町田市バイオエネルギーセンター(町田市下小山田町)で5月、ごみの燃焼ガスに含まれる二酸化炭素(C02)を使って温室栽培したイチゴの収穫が始まった。
イチゴ栽培は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた、地方自治体の主要なCO2排出源である一般廃棄物処理施設での実証試験。施設運営管理者のタクマ(兵庫県尼崎市)、イオン直営農場を運営するイオンアグリ創造(千葉県千葉市)が共同で実施している。
大規模ハウス園芸では近年、CO2供給による光合成の促進で、作物の収量や品質を向上させる「CO2施用」が注目されているが、液化炭酸ガスや燃焼装置の使用による化石燃料の消費が問題になっているという。
実験はタクマが開発した、ごみの燃焼ガスから植物の育成を阻害する成分などを除去した「CO2リッチガス」を安価に供給する設備を導入。イオンアグリ創造が、「CO2リッチガス」と従来型の「液化炭酸ガス」、それぞれの方式を導入した2棟の温室でイチゴを栽培した。
結果、CO2濃度が高い「CO2リッチガス方式」で栽培したイチゴの方が1個当たりの重量が約15%増。1ヘクタール当たりの比較では、年間で940トンのCO2削減、1,300万円の液化炭酸ガス費を削減できるという。
同施設で排出される燃焼ガスからは、50~80ヘクタール分のイチゴ栽培に必要なCO2を取り出すことができるという。タクマの技術担当者は「CO2が濃縮した液化炭酸ガスと異なり、CO2リッチガスは輸送に向かないため、近隣の畑での利用が考えられる」と説明する。
実証試験は2026年末まで実施。作物の安全性や経済性を評価し、イチゴの市場販売のほか、施設が生み出す熱と電気とCO2をハウス園芸に活用する「トリジェネレーション」の実現を目指す。