町田の古民家ギャラリー「可喜庵」(町田市能が谷町、TEL 042-735-5771)は6月11日より、建築家・山越邦彦の作品展を開催する。同展は、日本の風土をデザインした昭和の建築家4人を紹介するシリーズの2回目。
山越邦彦(1900~1980)は東京帝国大学工学部(現東京大学工学部)建築学科卒業後、モダニズムの啓蒙雑誌「建築時潮」を編集。芸術家としての建築家像を否定し、科学性と社会性のある建築を提唱した。
主な作品のうち、1933年に発表した自邸・ドモディナミカ(動力学の家)では、乾式工法と床暖房、ピロティを採用し、当時としては画期的な提案を行った。またDOMOMALTANGLAでは、太陽熱利用のほか生ゴミとふん尿をメタンガスに変えて台所の燃料にするなど、リサイクルやエコロジーに基づいた住宅設計を提案。熱・空気環境にかかわる数多くの論文を発表した。
同展では、DOMOMULTANGLAなど写真家・三沢博昭さんの写真10点のほか、自筆のスケッチなどを展示する。
同13日は文化財保存計画協会社長・矢野和之さんの講演会を開催。「空間流離」(建知出版)、「甦る古墳文化」(サンポージャーナル)、「歴史のまちのみちづくり」(日本交通計画協会)などの著書がある矢野さん。前回「藤井厚二氏」の講演会では、建築家やデザイナー、雑誌編集者など20人が参加した。
同ギャラリー広報担当の畑さんは「山越氏が活躍した1920年代は『日本で一番創造的な時代』と言われる。山越氏は建築の分野はもちろん、多岐に強い思想をもって主張した人物のようなので、講演会ではそのあたりの話も興味深いところ。人間と生態系を大切に考えた実験住宅、機能と美についての思想、昭和初期の激動とともにエコロジカルデザインを再考する機会となれば」と話す。
開催時間は10時~17時。日曜休廊。入場無料。講演会は2,000円。6月24日まで。