第90回天皇杯2回戦が9月5日、西が丘サッカー場で行われ、JFL所属のFC町田ゼルビアが格上J2に所属する東京ヴェルディを相手に大金星を挙げた。入場者数は3,231人。
JFL前期を3位で折り返し、シード権を得たゼルビアは天皇杯初出場。対するヴェルディは前身の読売クラブから通算5回優勝の古豪。2011年のJリーグ昇格を狙うゼルビアにとっては、将来の「南多摩ダービー」前哨戦ともいえる位置付けとなった。
試合当日の未明、ゼルビアのオフィシャルは、Jリーグ入会予備審査で「入会基準を満たせなかった」ことを発表。チームは昇格圏内の4位につけ、観客動員でもホームゲームでの入場者数基準を上回るとともに、昨年の予備審査結果を受けて「J2仕様」のスタジアム改修工事などを進めているさなかでの事態に関係者やサポーターに大きな動揺が広がった。
ゼルビア、約1カ月ぶりの公式戦はナイトゲーム。気温は31.7度ながら、酷暑のデーゲームを戦ってきたゼルビアの選手にとっては、「春先(8連勝)の動き」(相馬直樹監督)となる良いコンディションとなった。
試合はゼルビアの超ハイペースで始まった。前線から執拗なプレスをかけ、ルーズボールを奪うと時間をかけずにFW木島良輔選手と勝又慶典選手に縦パスを次々と送る。鬼気迫る攻撃にヴェルディの選手は思うようなプレーができない。徐々に試合が落ち着き、ヴェルディの反撃が見え始めた37分、FW河野広貴選手が乱暴の判定で退場処分となるも、前半はスコアレスで終了。
後半もゼルビアが主導権を握るが、チャンスに決めることができない。「JFLのゲーム展開のように、押し込みながらカウンターでやられる嫌な展開」(相馬監督)になりかけた73分、途中出場のFW山腰泰博選手がMF柳崎祥兵選手からの浮き球パスをダイレクトボレーでゴールにたたき込み先制。これが決勝点となり、天皇杯初勝利をあげた。この結果、Jリーグのチーム以外ではJFLのソニー仙台とゼルビアが天皇杯3回戦に駒を進めた。
試合後、相馬監督は「格上となるJリーグのクラブに勝利することができて、うれしい。多くのサポーターが駆け付けてくれて、ものすごく大きな力をくれた。本当に貴重な勝利」と話す。
来季のJリーグ昇格断念がチームに与えた影響について、「今季、クラブに集まった者のすべての目標がJリーグ昇格。選手たちはショックだったと思う。選手に審査結果が伝えられてから3日間。その時間の中で選手たちは切り替えて本当に良く戦ってくれた。天皇杯は多くの方に注目してもらえる。前を向いて戦おう、前に進もう、自分たちの持っているものをすべて出し切ろうと話した」と厳しい表情で明らかにした。「今後の試合、選手を戦える状態にしないといけないと思っている」とも。
天皇杯第3回戦は10月9日。東北電力ビッグスワンスタジアムでJ1のアルビレックス新潟と対戦。JFLリーグ戦は9月11日のホームゲーム。多摩市陸上競技場(多摩市)でソニー仙台と対戦する。
Jリーグ予備審査結果は9月7日、ゼルビアが開催する記者説明会で明らかにするという。