文教地区・淵野辺にあるちょっと変わった食堂。 入りやすそうだけど、鍵がかかっていてトビラが開かない。 なぜ、こんな場所が誕生したか? 「まちの不動産屋さん」が、ここを舞台に巻き起こる人間模様を語る連載コラム。
淵野辺で創業42年となる不動産屋の二代目、池田峰です。日本で一番「味どう?」と聞いている不動産屋です。当社、東郊住宅社が運営する入居者向け食堂「トーコーキッチン」にまつわるエトセトラをお話しさせていただきます。
ある日、こんなつぶやきを見つけました。
深く感じ入っている様子がひしひしと伝わってきます。
彼はいったいどうしたというのでしょうか?
さかのぼること2014年12月5日。それは当社、東郊住宅社の忘年会の最中のことでした。突然と舞い降りてきたのです。「あっ……そうか……、ウチが食堂をやればいいんだ」と。
……とは言うものの、そこに至るのには、いくつかの背景がありました。
その一つは、賃貸住宅生活における食事サービスへの需要の高まりです。
特に、進学にともなうお部屋探しで地方から来られたご家族の中で「新生活では食事のことが一番の心配」という声が年々増えているのを感じていました。そして、孤食になりがちな高齢単身者、仕事に家事に育児とすべてを一人でこなすシングルペアレントなど、すでに当社管理物件にお住まいのみなさんの中にも、食事サービスがあれば喜んでくださる方がきっといらっしゃるだろうと感じていました。
それゆえ、自社で食堂を運営すれば、当社管理物件入居者のみなさんに利便性を兼ね備えた健康的な食生活を自分たちで提供できると思い至ったのです。
そこで、先ほどのつぶやきです。
2016年6月6日。オープンから6ヶ月が経った時点で実現したトーコーキッチン初体験を誰かに伝えたい願望がついに極限まで達し、そして、世の中に向けてつぶやいたのです。
それを見つけたボクは、すぐさま彼にこう返信しました。
「琴線に触れるつぶやきをありがとう! 不動産屋冥利に尽きます!!」
つぶやき通り、以後トーコーキッチンの常連さんになってくれた彼。SNS上で毎日更新されるトーコーキッチンの日替わり定食の写真を使って、故郷にいるご両親へ、一人遠く離れた自身の食生活を報告してくれるようになったのでした。
ところで、トーコーキッチンは当社管理物件入居者のみなさんに食事を提供するためだけに誕生したのでしょうか? 自社運営せずに、既存の飲食店と提携しても良かったのではないでしょうか?
答えは「ノー」です。
実は、そこにトーコーキッチンに秘めたわたしたちの更なる思いがあるのです。
でも、それはまた別のお話。