特集

ここにはたしか!
#033 鶴川団地、夜もすがら骨董店、酒舗まさるや

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町田在住のライター&編集者の多田洋一さんが、「町田のちょっと懐かしい」を訪れ、今はなき店や出来事に思いをはせる、ゆるノスタルジー系連載。

#033 鶴川団地、夜もすがら骨董店、酒舗まさるや

こんにちは、多田洋一です。本に関わる仕事をしていて、町田市在住。さらに引き続きY.M.O.なんですが、1980にリリースされた「増殖」あたりからなんだかヘンなことになってきて、1981年の5作目「BGM 」では、「ライディーン」「テクノポリス」のように中学生が歌ったり暴走族が爆音で鳴らすような音楽からすっかり遠くへいってしまいました。私は当時、町田駅前の貸しレコード屋でバイトしていまして、その実感ではあきらかに客が借りていかなくなった。店でかけてもモゴモゴモヤモヤしてて景気がよくない感じだし...って書いてて、じつは私はこのアルバムと次の「テクノデリック」(同じ1981年)がすごく好きなんですよ。でも、いわゆる「トキオ!」みたいなY.M.O.のキャッチーさはあっというまに歌謡曲に取り込まれていって...この年に一番往年のY.M.O.らしい曲と言ったら、細野晴臣が作曲したイモ欽トリオの「ハイスクールララバイ」だったんじゃないかな。セルフパロディ…。

写真は鶴川団地のセンター名店街にあるモニュメントというか、看板というか、なかなかインパクトのあるオブジェ(ほんとは広場の写真も撮影したのですが、台風19号以来なかなか晴れなくて、ならいっそこのスマイル太陽で! ということに)。私にとって団地の商店街はむかしから「遊びにいくところ」でして、前々回の藤の台団地、前回の山崎団地へはチャリンコでよく遠征していました。しかし鶴川団地はちょっと遠すぎて、親との買い物では何度かいったけれど、ほぼご縁のなかった場所。それが最近になって、じつはよいお店がたくさんあると実感し、出かけていくことが多くなりまして...というわけで〝にわか〟な客ですが、こんなにも「いにしえのベッドタウン・町田の団地」らしい風情が残っているところ、ぜひ紹介したいと思ってしまいました。

鶴川団地の入居開始は1967年。「太陽の広場」周辺には前述のセンター名店街、そして道路を隔てたセントラル商店街が隣接している。でっ、セントラル商店街の入り口に立つと、ものすごい既視感というか、懐かしい風景なんですよ。ザ・昭和へタイムスリップ。ここにはたしかに私が子どもだったころの空気が流れている。右手にある「すざき米穀店」、左手には金魚も売ってる「ペット・園芸東渓園」、私がこの商店街を知るきっかけになった「蕎麦処藤田」(こちらの《生粉もり》おいしいです、《茸村うどん》も。今度は《弁慶そば》に挑戦してみたい)。さらに進むと「山田青果店」「モリヤ洋品店」「お好み焼き七ふく」...いや~昭和、いやいや、やっぱり昭和じゃなくて令和だよな。だって「趣味の店ハーモニー」の店先には〝ペイペイ使えます〟っていう赤いノボリと宮川大輔のポスターがあるし。そして「ハーモニー」の向かい側には一見レトロ、でもあきらかに新しいセンスを感じさせる古道具&喫茶の「夜もすがら骨董店」が。いつだったか店内を覗いていたら、喫茶席で超美人が台本らしいものを開いて打ち合わせをしていたことがあって、あれは知ってる人なら「あっ、○○○○!」とわかる女優さんとかだったのかもしれないなぁ。

さて、道路を渡って「太陽の広場」を囲むセンター名店街へ。夕刻だと、肉の「佐藤商店」の焼き鳥の匂いが強烈に食欲をそそります。こちらは肉はもちろん、お惣菜もおいしい。ちょっと黒っぽくなるまで揚げた唐揚げ、うまい。かなりでかいハムカツ、うまい。コロッケもメンチカツも、そのまま食べてもうまい。さらに鶴川図書館のほうへと向かって「野菜・くだものの「千丸」の店頭には地元産のおすすめ野菜が並んでいる。そして、「酒舗まさるや」の品揃えが、ちらっと見ただけで「ここはすごい」とわかる雰囲気を漂わせています。とくに日本酒と焼酎に強そうで...私は酒の銘柄にあまり詳しくないんで、今度酒豪な友人を連れていきたいな。棚の酒には値段とともに詳しい説明書きがズラリと並んでいて、この感じで思い出したのが、かつてレコード屋さんが元気だった時代の渋谷HMVやWAVEだったりして。見たこともない輸入盤に小さな手書き文字のポップが貼ってあって、いまはネット検索すれば得られる情報が多いけれど、こういう店頭でのわくわく感も、やっぱりいいな、と。

最後に、素朴な疑問。センター名店街のシンボルマークは写真のように太陽なんですが、セントラル商店街のアーケードの看板では、「ン」の字の点が星型でして、この太陽と星にはなにか因果関係があるのかしらん? もしも詳しいかたがいらっしゃったら、ぜひ教えてください!

【プロフィール】
多田洋一(ただ・よういち)
フリーランスのライター&編集者。雑誌での取材や映画/テレビドラマのノベライズ等。2010年より年1回、個人主宰の文芸創作誌「ウィッチンケア」を発行。第10号は2019年4月1日に発行!
http://witchenkare.blogspot.com/
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