文教地区・淵野辺にあるちょっと変わった食堂。入りやすそうでいて、鍵がかかっていてトビラが開かない。なぜ、こんな場所が誕生したか?「まちの不動産屋さん」2代目が、ここを舞台に巻き起こる人間模様を語る連載コラム。
淵野辺で創業43年となる不動産屋の二代目、池田峰です。日本で一番「味どう?」と聞いている不動産屋です。当社、東郊住宅社が運営する入居者向け食堂「トーコーキッチン」にまつわるエトセトラをお話しさせていただきます。
ある日、こんなつぶやきを見つけました。
心から評価してくださっている様子がひしひしと伝わってきます。
彼はいったいどうしたというのでしょうか?
トーコーキッチンは東郊住宅社が淵野辺駅周辺で管理する1,600室の賃貸物件にお住まいのみなさんに、利便性と健康的な食生活を提供するためにとの思いから誕生した食堂です。JR横浜線・淵野辺駅北口から徒歩2分のところにある商店街の一角に位置し、朝食100円、昼・夕食500円で毎日提供しています。
当社独自の入居者サービスゆえ、ご利用いただくためには、淵野辺エリアにある東郊住宅社の賃貸管理物件に入居していただかなくてはならないのです。
そこで、先ほどのつぶやきです。
2017年1月30日。不動産ポータルサイト「SUUMO」でトーコーキッチンの取材記事が掲載されて5日が経過したころのことです。おそらく引っ越す予定などなかったと思われる彼。たまたま目にした記事で紹介されていた不動産屋がやっているという入居者向けの食堂サービスに価値を見出し、突如湧き出た衝動を共有したい願望がついに極限まで達し、そして、世の中に向けてつぶやいたのです。
それを見つけたボクは、すぐさま彼にこう返信しました。
「うれしいです。淵野辺でお待ちしてます!」
実際のところ、淵野辺は生活しやすいです。でも、積極的に賃貸生活の場として選ばれるかというとそうではなく、どうしても学校や職場が近いからという消極的な理由で選ばれがちです。ところが、どうでしょう。彼はまちの小さな不動産屋が入居者サービスで行う食堂の存在を知ったことにより、そんな淵野辺に引っ越したくなると思ってくれたのです。
実は最近、当連載コラムを読んだことをきっかけにして、東郊住宅社の管理物件へ引っ越してきてくれた方がいらっしゃいました。決定理由はやはりトーコーキッチンの存在です。
また、当社管理物件への引っ越しを希望される後期高齢者の方のご来店も急増しています。トーコーキッチンのことをTVで知ったり、お子さんからその評判を聞いたりしてのお部屋探しです。
お子さんが「離れて暮らす年老いた親が心配なので、自宅近くへ呼び寄せたい」というきっかけが多いのですが、先日は、ご自身が望む「生き方」と照らし合わせた上で、現在お住まいの高齢者施設から当社管理物件へ引っ越すことを決断された方もいらっしゃいました。
コンビニよりも数が多い不動産屋の中から東郊住宅社を選び、その東郊住宅社の管理物件の中から新たな生活の場を選ぶ。受動的な転入理由が主だったまちが、たった一つの小さな食堂の存在によって、能動的な転入を促すまちへと変わりつつあるのです。
ところで、当社はトーコーキッチンを淵野辺以外には出店しないのでしょうか? 他のエリアに支店を出したり、フランチャイズ展開したりしないのでしょうか?
答えは「ノー」です。
実は、そこにトーコーキッチンがトーコーキッチンたる所以があるのです。
でも、それはまた別のお話。