文教地区・淵野辺にあるちょっと変わった食堂。入りやすそうでいて、鍵がかかっていてトビラが開かない。なぜ、こんな場所が誕生したか?「まちの不動産屋さん」2代目が、ここを舞台に巻き起こる人間模様を語る連載コラム。
淵野辺で創業43年となる不動産屋の二代目、池田峰です。日本で一番「味どう?」と聞いている不動産屋です。当社、東郊住宅社が運営する入居者向け食堂「トーコーキッチン」にまつわるエトセトラをお話しさせていただきます。
ある日、こんなつぶやきを見つけました。
詩的で哲学的な思考が溢れ出た様子がひしひしと伝わってきます。
彼はいったいどうしたというのでしょうか?
2015年12月27日から運営開始した入居者向け食堂「トーコーキッチン」。当社、東郊住宅社が淵野辺エリアで管理する1,600室の賃貸物件にお住まいのみなさんに、利便性と健康的な食生活を毎日提供するために誕生しました。朝食は100円、昼・夕食は500円です。
入居者のみなさんの食事の充実を図るのが第一の目的です。しかし、そのトーコーキッチンという「場」を新たに設けることに決めた背景にある思いは、それだけでありませんでした。
それは、単なる「食事の場」としてだけではなく、ほどよいコミュニケーションでゆるやかな繋がりを感じてもらい、入居者のみなさんそれぞれにとっての心地よい距離感で安心して身を置くことができる「自分の居場所」のような空間になるといいな、という思いです。
そこで、先ほどのつぶやきです。
トーコーキッチンが間もなく5年目へと突入しようとしていた2019年10月1日の午前6時23分のことです。早朝から情緒的な彼。……もしかして徹夜明けでしょうか? これから誰かにトーコーキッチンのことを説明しようとしてくれているのでしょうか? トーコーキッチンに抱く自身の感情を言葉で綴りたい願望がついに極限まで達し、そして、世の中に向けてつぶやいたのです。
それを見つけたボクは、すぐさま彼にこう返信しました。
「おはようございます。スタッフ一同、お帰りお待ちしてます!」
トーコーキッチンで掲げる理想の挨拶は「髪切った?」です。それに気が付けるくらいの頻度と、それを聞いても不快に思われない距離感でコミュニケーションを重ねましょうね、という思いを表しています。
入居者と不動産屋、食堂利用者と店員ではなく、一対一の人間同士として、お互い無理せず、欲張らず、押し付けない、そんなフラットな関係性のままが心地よい「自分の居場所」。そう、言うならば、そこで繰り広げられているのは「家族の日常」のような風景でしょうか。
だから、トーコーキッチンではスタンプカードのような来店促進はしません。入居者のみなさんが来たいと思ったときに来てもらえることが何よりうれしいと思っています。わたしたちは、入居者のみなさんがもっと来たいと思ってもらえるよう努力し、お待ちしています。
ところで、そんな入居者のみなさんを惹きつけるためのメニュー開発はどのようにしているのでしょうか? やっぱり、ありきたりな定食ばかりなのでしょうか?
答えは「ノー」です。
実は、そこにトーコーキッチンが望む更なる関係性があるのです。
でも、それはまた別のお話。