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夢のJ1へ FC町田ゼルビア奮戦記2020
#1 成長

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J2は2月末から新型コロナ問題による約4カ月の中断があった。月7試合、8試合という急ピッチで42試合の日程を消化しつつある。FC町田ゼルビアの今季はちょうど半ばだ。

ゼルビアは27日の栃木SC戦を終え、現在7勝8分け7敗。9月30日の第24節・ギラヴァンツ北九州戦を12位で迎える。

ランコ・ポポヴィッチ監督は、前半戦の評価を問われてこう語っていた。
「常に『もっと結果を残す』という姿勢を持ち続けなければならない。我々の内容を見れば、勝ち点がもっとあってもおかしくなかった」

ポポヴィッチ監督は今の結果に満足していない。一方で別の側面では「満足」を口にしていた。
「我々は完成されたチームでないし、まだ成長過程にあることを忘れてほしくない。正しい方向にチームが行っていること、成長していることに関しては満足している。例えば(佐野)海舟、(髙江)麗央、(小田)逸稀、(安藤)瑞季、(吉尾)海夏と個々が成長している。若手の成長はある意味、結果以上の価値がある」

今のゼルビアは選手たちの「成長」を楽しめるクラブだ。高卒2年目、3年目の若手が多く、彼らは実戦経験を積んではっきり進化している。

ポポヴィッチ監督やGK秋元陽太は若手の成長例として、真っ先にMF佐野海舟の名を挙げていた。佐野は2000年12月30日生まれでまだしばらく未成年だが、今季の成長は目覚ましい。

守備的MFなので得点にはそれほど絡まないが、佐野はとにかくデュエル(1対1)の勝率が高い。しかも守備範囲がべらぼうに広く、こぼれ球を頻繁に拾ってくれる。危険な場面に顔を出して、悪い流れを断ち切ってくれる。

攻撃の成長株はFW安藤瑞季だ。彼も高卒2年目で、セレッソ大阪からの期限付き移籍でこのクラブに加わった。新型コロナウイルスの影響で全体練習の再開まで待ちぼうけを食らったが、6月末からのリーグ戦で連携が日に日に上がっている。特に平戸太貴との「平安コンビ」は相性がいい。

安藤は動き出しがよく、スペースにガンガン飛び出して行く選手。8月に入った頃からそんな動きが単発で終わらず、2人目3人目とつながるようになってきた。9月6日のFC琉球戦の前半19分には、安藤のフリック(落とし)から平戸がゴールを決めている。

安藤はこう振り返っていた。
「太貴くんの動きは見えていなかったんですけれど『フリック』と聞こえた、ずっと練習していた背後の動きが、ゴールにつながった」

同じFC琉球戦の前半30分には平戸のスルーパスから安藤が決めた。安藤はこう述べていた。
「お互いの目線とタイミングだけで、相手の最終ラインを破ってゴールを奪えたのは収穫。やってまだ数ヶ月だけど、お互いのタイミングや距離感は徐々にいい関係になってきている。太貴くんが前を向いたら良いパスが出るので信頼している。僕のイメージに合わせてくれている」

平戸は安藤との関係についてこう語っていた。
「一緒にやる時間が長いので、お互いのイメージが徐々に合ってきている。瑞季はチームとして背後、前への動きを言われている。それを自分たちが見逃さずに上手く使えれば、チャンスになる。試合を重ねていくごとに攻撃の狙う場所、タイミングが合ってきている」

他にもボランチ髙江麗央と小田逸稀の東福岡高・同級生コンビや、左利きの技巧派・吉尾海夏と有望な若手は目白押しだ。

8月9月と試合を重ねるごとに、選手という点が「線」として繋がり始めている。9月に入って選手がテーマとして挙げているのは「3人目の動き」で、これが揃えば今度は線が「面」になる。

チーム作りにはどうしても時間がかかるし、特に攻撃は時間がかかる。長いリーグ戦の中には狙いがハマらない試合もあって、27日の栃木SC戦のような悔しい敗戦もある。ただそんな「波」はありつつ、今のゼルビアは開幕直後にできていなかったことができ始めていて、しかもまだかなり「伸びしろ」がある。

成長の楽しみはピッチ内にとどまらない。町田市は現在、町田GIONスタジアムの改装工事を進めていて、来年の開幕前には立派なバックスタンドが完成しているはずだ。加えて2021年夏の完成に向けて町田市三輪緑山にクラブハウス、天然芝グラウンドの整備が進められている。いずれもJ1ライセンスの要件を満たす施設で、ゼルビアはクラブを挙げてJ1への準備を進めている。

9月30日に町田GIONスタジアムへ迎える対戦相手は、徳島ヴォルティスと熾烈な首位争いを見せている強敵・ギラヴァンツ北九州。新型コロナウィルスによる入場者数制限も緩和され、チケットは問題なく購入できるはずだ。町田市民、小田急沿線の皆さまには今こそゼルビアの楽しい成長過程をご覧いただきたい。

【プロフィール】
大島和人(おおしま・かずと)1976年11月生まれ。2012年から町田市某所在住。サッカーを皮切りにバスケットボールや野球の取材・執筆も行っている。

写真提供 FC町田ゼルビア

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