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ここにはたしか!
♯043 マリー寫眞舘、にちようだいく、スガナミ楽器

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町田在住のライター&編集者の多田洋一さんが、「町田のちょっと懐かしい」を訪れ、今はなき店や出来事に思いをはせる、ゆるノスタルジー系連載。

♯043 マリー寫眞舘、にちようだいく、スガナミ楽器

こんにちは、多田洋一です。本に関わる仕事をしていて、町田市在住。前回に引き続きギタリストのCharについてでして、アイドル「卒業」後のジョニー、ルイス&チャー(のちにピンククラウドと改名/活動時期は1978年~1994年)のライヴを、私はたぶん30回くらい観ています。テレビや芸能誌にはほとんど取り上げられなかったものの、コンサート会場はいつも満杯に近かったはず。アイドル時代との違いは客層で、とにかく男子ばっかり。女子もいましたが(2~3割?)、ブイブイいわせてる感じのロック姐さんが多かったな。日比谷野音、渋谷公会堂、同じく渋谷のライヴハウス「屋根裏」(密すぎて酸欠寸前...)、山下公園の「氷川丸」船上、そしてバブル時代の東京を象徴するような「汐留PIT」等々。当時、私が「チャーのライヴにいく」って言うと、世良公則&ツイスト、原田真二とともに「ロック御三家」と呼ばれていたころしか知らない人から「ああ『気絶するほど悩ましい』の。まだいたの?」とか(まあ「言わせとけ」って感じでしたけど)。そのころのライヴ映像はいまでもYouTubeで観られるので、興味を持った人はぜひアクセスしてみてください。

今回の写真は小田急町田第二踏切で撮影。真ん中あたりの黄色い建物は、いまはイタリア料理の「トラットリア マリー」だけど、むかしは「マリー写真館」でした。お店の公式ホームページによると、この場所で開業したのは1939年。当時の写真も掲載されていて、看板の文字が「写真館」ではなく「寫眞舘」なことに由緒ある歴史を感じます。記憶違いでなければ、たしか同館の二代目社長さんが私の父親と高校の同級生で、何度か館内に入ったこともあったような(撮影してもらったことはなかったのですが)。...しかし、この線路脇の道路。踏切があって人の往来が多いうえにバスも走るので、なんとも危なっかしい。「りそな銀行」が入っている「東京建物町田ビル」ができたのが1992年で、そのときにいまある歩道もできたと記憶していますが、それにしてもこんな狭いところにこんな巨大なビルかい、と驚愕しましたですよ。いつのころからか「POPビル」のまえにはバスの右折を誘導する方が立つようになって...きっと遠くない将来、ここを通るバスも〈バスセンター発/着〉で統一されていくような予感がします。

第二踏切の線路を挟んだ、住所だと原町田五丁目側になる一画。「天然石専門店 STONE HOUSE」の角を線路沿いに新宿方面へと少し入ると、地中海料理の「コシード デ ソル」とラーメンの「いぶし銀」という人気店が。でも踏切を渡ってすぐのあたりは、やや閑散とした印象を受けるのだけれど、いや、でもこの一帯には学習塾が集中しているので、こどものいない初老男(←私)にとっての〈個人の感想〉かもしれないな。そうだ、いま不動産屋さんが入っているビルのあたりには、以前はわりと大きなD.I.Y.用品店があったと記憶しています。たしか、「にちようだいく」という名称だったような(「ザ」がついていたかもしれない)。1970年代後半にできたのかな、まだ「ドゥ・イット・ユアセルフ」って言葉(と概念)が真新しかったころで、文具の「なかじま」とは違った、工具って感じのテープとか接着剤とか角材が珍しくて、ときどきいっては下手くそな備品なんかをつくったりしていました。それにしても第一踏切の線路沿いから入って絵画・書道用品の「坂本美術工芸」のところを通り過ぎて第二踏切近くへと続く「く」の字をした道って、むかしから個人的には不思議道。数年まえまで中華料理店があったような気もするのですが、いまはない。

写真をもう1枚。これはほぼ同じ場所で数ヶ月まえに撮ったもので、ああ、わが青春のスガナミ楽器が解体されていく! と、通りがかったさいにおセンチになって思わずアプリを起動させてしまいました。スガナミ楽器については、じつは♯002で早々に書いて、そこで「スガナミのことは10万字くらい書けそう」と大口を叩いたくせに、その後40回以上の連載でも言及しないままでした。現在はもとの場所近くの仮店舗で営業されていて、いま駐車場になっているところにある〈建設計画のお知らせ〉には「(仮称)スガナミ楽器 町田ビル」と記されているので、きっとまた楽器店ができるのだと思います。

でっ、私が高校生だったころのスガナミさん1階・楽器売り場での思い出。クラシック関連で馴染みのある方には信じられないでしょうが、1970年代半ば、同店の1階中央はエレキギターやアンプで占められていました。店員さんも長髪でロックっぽい風体。私は遊ばせてもらった数年間でギター1本とアンプ1台を買っただけでしたが、売り物を試し弾きさせてもらったり、店員さんから手ほどきを受けたこと、多数。ほんと、楽しい時間を過ごさせていただきまして(感謝!)、そのころ店にときどき姿を現すIさんという方がいて、その人が店内のギターを触ると、なんか、桁違いに凄い音が響いたのです。ジミー・ペイジに似てて、寒い日には褞袍(どてら)を羽織って「よう!」って感じで現れたりする。自由人っぽいIさん。つま弾いているところをお見かけしたのは数回でしたが、とにかく、オレもいつかあんなふうに、と思わせるギターの達人。それで、ある日店員さんが教えてくれたんです。「Iさんはプロなんだ。いま、山田パンダのツアーでまわってる」と。それを聞いたときの、微妙な感覚...ソロになった山田パンダ(「神田川」をヒットさせた、南こうせつとかぐや姫のメンバー)のバックなのか。こんなジミー・ペイジみたいな人が、山田パンダ。ロックのプロはたいへんなんだなぁ、と不遜にも思ってしまったことをいまでも覚えているのでした。

【プロフィール】
多田洋一(ただ・よういち)
フリーランスのライター&編集者。雑誌での取材や映画/テレビドラマのノベライズ等。2010年より年1回、個人主宰の文芸創作誌「ウィッチンケア」を発行。第11号は2021年4月1日に発行予定!
http://witchenkare.blogspot.com/
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