文教地区・淵野辺にあるちょっと変わった食堂。入りやすそうでいて、鍵がかかっていてトビラが開かない。なぜ、こんな場所が誕生したか?「まちの不動産屋さん」2代目が、ここを舞台に巻き起こる人間模様を語る連載コラム。
淵野辺で創業45年となる不動産屋の二代目、池田峰です。日本で一番「味どう?」と聞いている不動産屋です。当社、東郊住宅社が運営する入居者向け食堂「トーコーキッチン」にまつわるエトセトラをお話しさせていただきます。
ある日、こんなハッシュタグ(#)を見つけました。
東郊住宅社に出資したがっている様子がひしひしと伝わってきます。
彼女はいったいどうしたというのでしょうか?
1976年2月。東郊住宅社は淵野辺の一角で産声をあげました。先代が立ち上げた当社の会社形態は、2006年の会社法施行に伴って現在では新たに設立することができなくなった「有限会社」です。株式会社への移行は考えていないので、今後も「有限会社」のままです。
そんな小さな「有限会社」の不動産屋が自分たちにできる範囲内の資力・能力・責任で始めたのが入居者向け食堂トーコーキッチンです。自分たちが管理を任された1,600室の賃貸物件に入居しているみなさんに利便性と健康的な食生活を提供することが第一の目的です。
そこで、先ほどのハッシュタグ(#)です。
2016年9月22日。運営開始からまだ1年に満たない時期ではありましたが、このちょっと変わった食堂が口コミで広がり、入居者のみなさんが友人・知人を連れて一緒に来てくださるなど、トーコーキッチンを面白がってくださる方が急激に増えていた頃のことでした。
今回の彼女もその一人でした。知人に連れて来てもらったトーコーキッチンが気に入り、入居者ではない自分も毎日通えるようになりたい願望がついに極限まで達し、そして、思いの丈をハッシュタグ(#)に託したのです。
それを見つけたボクは、すぐさま彼女にこう返信しました。
「とても上場はできませんが、ぜひ入居者さんか、物件オーナーさんか、取引関係業者さんになってください!」
トーコーキッチンには鍵のかかった扉が設置されており、店内に入るには特別なカードキーが必要になります。そのカードキーを所有しているのは、当社管理物件の入居者のみなさん、当社に物件をお預けくださっているオーナーさん、そして、入居者のみなさんが安心・安全な暮らしを送れるように当社に協力してくださっている取引関係業者のみなさんです。
東郊住宅社が株式を上場すれば出資者としてカードキーを入手できるはず……。彼女はそう考えたのでしょう。一人の大学生から寄せられた、とてつもなく果てしない要望ではありましたが、今でもとてもうれしく思っています。
余談ですが、トーコーキッチンを自由に使える権利獲得を諦めきれなかった彼女は、後日トーコーキッチンでのアルバイトを志願してきてくれ、卒業まで一緒に働いてくれました。
ところで、トーコーキッチンに寄せられる要望は他にどんなものがあるのでしょう? やはり食事に関すること、あとは今回のように運営に関することぐらいでしょうか?
答えは「ノー」です。
実は、わたしたちには全く思いも寄らなかった、更に壮大な要望が寄せられたのです。
でも、それはまた別のお話。