特集

まちさがのうか
#5 神蔵いくよさんのインゲン

  • 115

  •  

町田と相模原のおいしいものを紹介したい!農家応援団を自任する増田久美子さんが農家を訪ね、今、畑にあるものを料理する。

「鶴川にハーブを作っている素敵な農家がいますよ」とある方にご紹介いただき、神蔵いくよさんに初めてお会いしたのは4月でした。明るくてさっぱりとご自分のことを語ってくださる、噂通りの素敵な方でした。「今は時期的に野菜はないのよね~」ということで、日を改めて畑にお邪魔しました。

------ わあ、素敵なお花を用意して下さって、ありがとうございます。今日はよろしくお願いします。

こちらこそ。畑をご案内しながらお話しましょうか。まずは野菜の区画。基本的に自家用中心です。一部で、畑をやってみたい人向けの指導付きの貸農園「畑塾」というのもやっています。親子で畑に来て、自分たちの食べるものがどのように畑で出来ているか知って欲しいと始めました。今年で11年目です。通ってきていた子が食べ物に興味を持って成長し、最近栄養士を進路として選んだと聞いて、やってきて良かったなあと思いました。(*畑塾は現在満席のため募集・キャンセル待ちはしていません)。

こちら側はハーブ類。どんどん種類が増えてしまって、先日名札を立てるときに数えたら100種類以上ありました。

------- 100種類!それはすごい。

今花が咲いているものだけで30種類以上。紹介のある花屋さん限定ですが、切り花として出荷もしています。畑のすぐ横をたくさん人が通るからか、整えていないとゴミを投げ込まれることもあるんですよ。できるだけきれいな農地にしようと思って努力している部分もあります。

------- なるほど。町田のような畑と住宅が混在する地域ならではの悩みもあるんですね。神蔵さんはもともと町田のご出身なんですか?

三輪町出身です。植物の栽培がとにかく好きで、都立園芸高校から恵泉の短大に進んで園芸を学びました。当時伊勢原に全寮制のキャンパスがあり、ハタチ前後にとても密度の濃い時間を過ごしたのも、一生の方向を決めたかもしれません。卒業して、鶴川駅の反対側の農家の跡取りと見合い結婚しました。農家と結婚すればずっと畑を続けられると思ったんです。

結婚してからは、とにかく毎日畑に出ています。恵泉の恩師であり、ハーブ研究家でもあった小泉美智子先生の園芸療法に感銘を受けてハーブを始めたほか、先生の講座のアシスタントを7年やりました。残念ながら先生は昨年秋に亡くなり、今は先生の思いを伝えたいという気持ちが強いです。ハーブはもともと薬として研究されてきたくらい、毒にも薬にもなるものです。正しいハーブの使い方の知識があって、ほんの少し楽しむ余裕があれば、いつもの生活に潤いができる、そういうことを伝えたいと思っています。

------- 畑はここだけですか?

いいえ、ここは私の畑で、夫の畑はまた別のところに。合わせて850坪弱(約28a)です。夫は夫、私は私、それぞれ作りたいものを作り、互いに口を出さない方針なの。彼は農業以外の仕事をしてから農家を継ぎました。今は農薬や化学肥料を使わずに野菜を育て、庭先販売しています。庭先販売については夫の領域なので「何か売るものある?」「じゃあこれとこれは出してもいいかな」と、ときどき私の作ったものも一緒に出すけど、その売り上げは彼のもの。彼のビール代の足しになるくらいは、まあいいかって、ふふふ。

以前は自分で作った野菜は自家用以外に考えていませんでしたが、「神蔵さんの野菜なら規格なんて気にしないから買いたい」と言ってくださる方もいることがわかり、少し考え方を変えました。新鮮な野菜の本当のおいしさを知って欲しいという思いから、一部は子ども食堂に寄付もしています。

------- それはぜひ販売もしてください!町田では少し探せば野菜の無人販売があちこちにあり、近所で育った採れたての野菜を買って日常的に食べられるのが、街の魅力になっていると思います。ところで、ミツバチがたくさんいますね。

近くにミツバチを飼っている人がいるの。

------- あっ!ミツバチに交じって一匹だけ青いハチが!幸せを呼ぶ青いハチと言われるルリモンハナバチの仲間では?(写真は神蔵さん提供)

畑に来るのはミツバチのほかにもいろいろな虫や、虫がいれば虫を食べる鳥も来ます。畑の植物やミツバチは管理された生き物だけど、それがあることで地域の生物多様性が維持される意味合いは大きいと思っています。住宅ばかりになってしまったら、いなくなる生き物もいますからね。

------- 神蔵さんにとって農業の一番楽しいところって、どこでしょうか?

毎年一年生になれるところ、かな。植物って基本的には一年に一度、そのシーズンしか育てられないから。今年は何に挑戦しようかと、計画するときが一番楽しいです。毎日畑で目一杯仕事して、一日の終わりに「ああ今日もよく働いた」と寝るのが幸せ。農業は肉体的に負担が大きいし、好きでもなかったら続けるのは苦痛でしかないわね。私は好きでやっていて、それで農地が継続して、少しは役に立っていると思うんですけど、どうかな?

今回の料理 「いんげんの肉巻き、ハーブソルト添え」

今回は、神蔵さんが一番好きな野菜だという「インゲン」を。さらに神蔵さんにおすすめのハーブソルトの作り方を教えていただき、いんげんの肉巻きに添えました。

【肉巻きの材料】
豚バラ肉うす切り8枚、いんげん8本、人参5㎝

【作り方】 
① いんげんはすじを取り、半分に折る。人参は拍子切りにする
② 鍋に湯を沸かして人参を入れ、3分ほど茹でたらいんげんを追加して1~2分茹で、湯を切る。
③ 豚バラ肉を広げ、いんげんと人参を2本ずつ巻く
④ フライパンに少量の油をひき、肉巻きの巻き終わりを下にして並べ、中火で焼く。最初の面に焼き色がついたら転がしてほかの面も焼く。

【ハーブソルトの材料】
ローズマリー1枝、タイム2枝、セージ3枚、塩18g(ハーブの重量のおよそ倍)
*妊婦さんは、できればセージを入れずにローズマリーとタイムだけで作ってください。(神蔵さんより)

【作り方】
① ローズマリーとタイムは枝をしごいて葉のみにする。
② 1とセージはミルで細かくするか、包丁でみじんに切る。
③ フライパンで油をひかずに塩を炒り、さらさらになったところで火を止め、2を入れて混ぜる。
*ハーブソルトは熱が取れたら瓶などに入れて冷蔵庫で保存してください。お肉に合わせるのがおすすめだそうです。

【プロフィール】
増田久美子:農産物の販売の仕事で、北海道から沖縄まで、農家を回ってきました。地元町田・相模原にも、素敵な農家がたくさんいる!地元の農家ともっとお近づきになりたいと、農家を訪ね、お話を聞き、料理して食べて、コラムに書いてみることにしました。野菜ソムリエプロ、食の6次産業化プロデューサー、まちだ里のマルシェ実行委員会代表
★まちだ里のマルシェ
町田市内とその周辺のおいしいものが集まる、とてもローカルなマルシェです。町田の農家を中心に、厳選した材料でていねいに作った加工品の作り手が出店します。最新情報はFBまたはinstagramでご確認ください。
https://www.facebook.com/machidamarche/
instagram ID:machidamarche
  • はてなブックマークに追加
エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース