特集

ここにはたしか!
♯047 町田市立国際版画美術館、芹ヶ谷公園、多摩都市モノレール

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町田在住のライター&編集者の多田洋一さんが、「町田のちょっと懐かしい」を訪れ、今はなき店や出来事に思いをはせる、ゆるノスタルジー系連載。

♯047 町田市立国際版画美術館、芹ヶ谷公園、多摩都市モノレール

こんにちは、多田洋一です。本に関わる仕事をしていて、町田市在住。ええと、前々回からビートルズの話をしていまして、その続きです。1980年1月のポール・マッカートニー日本で逮捕、も衝撃でしたが、同年12月にはジョン・レノンがファンに射殺されちゃって。事件が起きたのはニューヨークの午後11時ごろ(日本標準時より14時間遅い)で、いまでも「ジョンの命日は12月8日」が一般的ですが、大学生だった私にとっては12月9日(火曜日)の早い夕方に流れてきたニュースだったな。じつはこの年、私は体調を崩して夏と秋に町田市民病院のお世話になっていまして、当日も自宅療養中。たしか、テレビのニュース速報(都心では号外も配られたとか)で知って、詳報が伝わるほどに気分が滅入って...まあ、きっつい体験でしたね。個人的には、いまだに「イマジン」が流れてくると複雑な思いに駆られるのでありまして、だから、東京五輪2020の開会式で〝平和のメッセージ〟的に使用されたのも、正直かなり引いた~。ちなみに聖火走者として登場した長嶋茂雄さんは1980年10月に読売巨人軍の監督を解任され、11月には王貞治さんも現役引退したのでした。 

今回の写真は、文学館通りから町田街道の交差点を直進して、ヘアーサロン「イナミ」も越えた先からぐぐっと下り始める坂道。住所だと原町田三丁目と四丁目の境で、《スピード落とせ》という市の看板があるくらいの...ほんと、道幅がタイトで勾配も厳しい(でも見晴らしはよい)ところです。市街地との高低差20メートル以上という坂を降りきった左手には町田市立国際版画美術館があって、ええと、ここが開館したのは1987年。同館を含む芹ヶ谷公園は、1982年には一部開園していたようで...私、公園造成時のだだっ広い空き地だったころの風景を覚えています。喫茶店のカウンターで知り合ったMさん(いまは音信不通)に、何度かクルマで連れていってもらった。

Mさんは10歳くらい年上で「富士スピードウェイでのレース経験がある」とのことで、帰り時間が一緒になるとたまに愛車(カリーナだったかな?)で送ってくれて、そのさいの寄り道でこの坂を通ったんですが、いま思えば「よくもまあ無事で」と心臓が縮みそうな猛スピードを出す人でした。「オレは3センチ幅があれば減速しないで対向車とすれ違える/プロは1センチがわかる」みたいなことを言って坂で加速、いまの第一駐車場あたりでグィーンと左折してクルマを停め、余裕の一服、みたいな。むき出しの土砂の風景がいまも目に焼き付いています。BGMにかかっていたドゥービー・ブラザーズの「ミニット・バイ・ミニット」とともに。

私は1980年代半ばから生活拠点が「多摩川の向こう側」になっちゃったので、2013年に町田の実家に戻るまで、芹ヶ谷公園や版画美術館とはほぼ縁のないまま生活してきました。当時、一番馴染みがあったのは、小田急線の車窓から眺める看板だったりして...いつごろからあるのだろう。あれが左側に出てくると「ああ、東京から町田に戻ってきたぜ」と、みょうに落ち着いたりしたものでした(あっ、でも2007年早々からしばらくは、看板を見るたびに世間を震撼させたあの事件のことが頭を過ぎってました)。

そんな私ですが、最近は「芹ヶ谷公園“芸術の杜“プロジェクト」に関心を持っています。2024年のリニューアルオープンに向けて年明けには公園や町田市立国際工芸美術館(仮称)に着工、とのこと。ただ版画美術館の設計者が工事差し止めの仮処分を地裁に申し立てしていたり、計画を見直すべきとの声もあるようだし。とにかく、市の公式サイトから「  芹ヶ谷公園"芸術の杜"プロジェクト パークミュージアム CONCEPT BOOK 概要版」を入手して目を通しました。でっ、東京五輪2020の国立競技場~無観客開催までのドタバタ(や負債額)をいやおうなしに思い浮かべてしまい、「もう決まったことだから」で大丈夫なのかなぁ、と。個人的な感想をひとつ述べますと、芹ヶ谷公園をたとえば井の頭恩賜公園や南池袋公園(なんならニューヨークのセントラル・パークでも)みたいな「市街地と一体型で賑わう公園」と捉えるのは、ちょっと無理なんじゃないかな、と思っています。

ただ、いろんなサイトをまわってみると、このプロジェクトについては「いまの芹ヶ谷公園(と版画美術館と工芸美術館)をどうするか」という単体の問題(だけ)ではなく「多摩都市モノレールの延伸」や「町田都市計画道路3・3・36号」の進捗具合とも併せて区画の将来像を考えなければいけないようにも思えてきて...ちょっと、話をでかくし過ぎたので最後にごく身近なことに引き寄せて終わりますが、私の母親(85歳)は私が中学生ぐらいのときから「ウチの近くにはいずれモノレールが通って便利になるのよ」と言い続けていましたよ。いずれ...現在は「2032年ごろに開通」と言われているんでしたっけ? さて、果たして母親と私はその「便利なモノ」に乗る日までこの世に存在できるのか? みなさま(とくに若いみなさま)、町田の未来に禍根を残さぬよう、とにかくCONCEPT BOOKには一度目を通してみることをおすすめします。 

【プロフィール】 
多田洋一(ただ・よういち) 
フリーランスのライター&編集者。雑誌での取材や映画/テレビドラマのノベライズ等。2010年より年1回、個人主宰の文芸創作誌「ウィッチンケア」を発行。第11号は2021年4月1日に発行! 
http://witchenkare.blogspot.com/ 
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