文教地区・淵野辺にあるちょっと変わった食堂。入りやすそうでいて、鍵がかかっていてトビラが開かない。なぜ、こんな場所が誕生したか?「まちの不動産屋さん」2代目が、ここを舞台に巻き起こる人間模様を語る連載コラム。
淵野辺で創業45年となる不動産屋の二代目、池田峰です。日本で一番「味どう?」と聞いている不動産屋です。当社、東郊住宅社が運営する入居者向け食堂「トーコーキッチン」にまつわるエトセトラをお話しさせていただきます。
ある日、こんなつぶやきを見つけました。
発想の出だしから斜め上を行っている様子がひしひしと伝わってきます。
彼はいったいどうしたというのでしょうか?
まちの小さな不動産屋である当社、東郊住宅社が淵野辺エリアで管理する1,800室の賃貸物件にお住まいのみなさんに、利便性と健康的な食生活を毎日提供すべく誕生した入居者向け食堂トーコーキッチン。朝の定食は100円、昼・夜の定食は500円で提供しています。
そんなトーコーキッチンですが、ありがたいことに2016年度グッドデザイン・ベスト100およびグッドデザイン特別賞[地域づくり]を受賞しました。新サービスのデザインとして応募していたので、「地域づくり」という観点でも評価をしてくださったことに驚きました。
そこで、先ほどのつぶやきです。
秋の衆議院議員総選挙を控えた2017年7月11日。愛媛県での獣医学部新設計画をめぐる問題が取りざたされ、新聞やTVを大いに賑わせていた頃のことです。当時の内閣支持率が過去最低を記録したと報道されるなど、選挙の行方に世間の関心が高まっていました。
今回の彼もその一人でしょうか。たとえ奇想天外であっても、たとえ破れかぶれであっても、たとえ荒唐無稽であっても、世の中が少しでもより良い方向に変わっていって欲しい願望がついに極限まで達し、そして、世の中に向けてつぶやいたのです。
それを見つけたボクは、すぐさま彼にこう返信しました。
「Have a nice 投票!」
彼がどうしてトーコーキッチンを絡めてつぶやいたのか、実際のところは不明なのですが、トーコーキッチンを運営していると「まちづくりに貢献ですね」「ゆくゆくは議員さんですね」などと仰っていただくことがあります。でも、わたしたちはあくまで当社が行う入居者サービスの一環として食堂を運営しているだけですので、もうひたすら恐縮しきりです。
わたしたちはトーコーキッチンという「食」を媒介としたコミュニケーション媒体を通じて、目の前にいる一人ひとりの入居者のみなさんの笑顔をたくさん集めたいと思っています。そして、いつの日かその集めた笑顔一つひとつの点が線になり、またいつの日か線が面になり、その最終的な結果として「淵野辺が変わったね」という言葉が周りから自然に聞こえてくるようになったら、わたしたち、まちの小さな不動産屋としてうれしいなと思っています。
ちなみにですが……トーコーキッチン党を結成した暁に、今回の彼をはじめとした有権者のみなさんから求められる公約は「朝食100円!」なのでしょうね、やっぱり。
ところで、トーコーキッチンを始めるに際して、参考にした同様の既存サービスはあったのでしょうか?
答えは「ノー」です。
実は、そこにトーコーキッチンが多くの方に面白がっていただけている背景があるのです。でも、それはまた別のお話。