文教地区・淵野辺にあるちょっと変わった食堂。入りやすそうでいて、鍵がかかっていてトビラが開かない。なぜ、こんな場所が誕生したか?「まちの不動産屋さん」2代目が、ここを舞台に巻き起こる人間模様を語る連載コラム。
淵野辺で創業47年となる不動産屋の二代目、池田峰です。日本で一番「味どう?」と聞いている不動産屋です。当社、東郊住宅社が運営する入居者向け食堂「トーコーキッチン」にまつわるエトセトラをお話しさせていただきます。
ある日、こんなつぶやきを見つけました。
朝食100円に驚いている様子がひしひしと伝わってきます。
彼女はいったいどうしたというのでしょうか?
トーコーキッチンはわたしたち東郊住宅社が淵野辺周辺で管理する1,800室の賃貸物件にお住まいのみなさんに利便性と健康的な食生活を提供するための食堂として誕生しました。年末年始の4日間(12月30日~1月2日)を除き、朝8時から夜8時まで毎日休まずに営業しています。
この食堂は入居者サービスの一環として自社で運営しているので儲けは度外視。トーコーキッチンでは朝の定食が100円、昼・夜の定食が500円で提供されています。
そこで、先ほどのつぶやきです。
2022年1月23日午後7:39。テレビ朝日系列で放送のバラエティ番組「ナニコレ珍百景」で、トーコーキッチンが満場一致で珍百景に認定された直後のころのことです。番組を観て気になった彼女は、すぐさまトーコーキッチンをネット検索。100円朝食のお得さを驚きと共に伝えたい願望がついに極限まで達し、そして、世の中に向けてつぶやいたのです。
それを見つけたボクは、すぐさま彼女にこう返信しました。
「栄養バランスチェックもありがとうございます。励みになります!」
500円の昼・夜の定食は、わたしたち東郊住宅社が利益を取らないことによって成立するような設定なのですが、100円朝食はわたしたちが利益を取らなくても赤字です。しかも、200円にしても、300円にしても赤字です。
そもそも、進学にともなうお部屋探しをするご家族の中で「新生活は食事が一番の心配」という声が年々増えているのを感じ、わたしたちがその一助になれればと、入居者サービスとしての食堂を着想しました。
ならば、「管理物件入居者のみなさんに利便性と健康的な食生活を提供する」という第一の目的をシンプルに追求すべく、朝食は100円にしよう。そうすれば、より多くの入居者に朝食を食べに来てもらえるかもしれない。そう思い、朝食を100円に設定しました。
さらに、トーコーキッチンでは料理の味と栄養バランスにも気を付けてみました。コンセプトは「お母さんの料理」です。毎日食べても毎食食べても飽きない、おいしくてバランスのとれた料理です。そのためにもレトルトなどは使わないで、あくまでも手づくりにこだわっています。
ところで、トーコーキッチンは東郊住宅社のボランティア事業でしょうか? トーコーキッチンが生み出すのは100円朝食による赤字だけでしょうか?
答えは「ノー」です。
実は、そこにわたしたちの不動産屋としての思いが込められているのです。
でも、それはまた別のお話。