文教地区・淵野辺にあるちょっと変わった食堂。入りやすそうでいて、鍵がかかっていてトビラが開かない。なぜ、こんな場所が誕生したか?「まちの不動産屋さん」2代目が、ここを舞台に巻き起こる人間模様を語る連載コラム。
淵野辺で創業42年となる不動産屋の二代目、池田峰です。日本で一番「味どう?」と聞いている不動産屋です。当社、東郊住宅社が運営する入居者向け食堂「トーコーキッチン」にまつわるエトセトラをお話しさせていただきます。
ある日、こんなつぶやきを見つけました。
闘志が溢れ出てしまっている様子がひしひしと伝わってきます。
彼女はいったいどうしたというのでしょうか?
トーコーキッチンでは、朝の定食が100円、昼・夜の定食が500円で提供されています。
100円の朝食は出れば出るほど赤字です。そのため、価格設定の際にはボク以外のすべての人が朝食を100円に設定することに反対でした。「300円でも十分喜んでもらえる内容だ」「間をとって200円は?」といった声がその多くでした。しかし、実のところ、200円にしても300円にしても赤字には変わりないので、「管理物件入居者のみなさんに利便性と健康的な食生活を提供する」という第一の目的をシンプルに追求すべく、100円に設定しました。わかりやすい金額で、少しでも多くの入居者のみなさんに朝食を食べに来ていただけることの方がはるかにうれしく、はるかに意義深いことですから。
では、500円の昼・夕食はどうでしょう? 結論から言うと、赤字ではありません。100円朝食以外すべてのメニューは赤字にならない設定になっています。それは、わたしたちが食堂で得られる利益を放棄しているからです。もっと言うと、余分に出た利益は食材と人件費に再投入しています。つまり、みんなが食べれば食べるほどごはんがどんどんおいしくなり、みんなが食べれば食べるほどスタッフの笑顔もどんどん増える仕組みになっています。
ついでに言うと、オープン当初の3ヶ月間は昼食500円、夕食700円でした。そもそも当時の大学生の一日当たりの可処分金額を基に設定した夕食700円という金額だったのですが、社会人にとってはうれしい700円も、学生にとっては700円が手元にあれば他に食べたいものの選択肢が一気に増えることが次第にわかってきました。そこで、夕食も500円に変更したのです。700円で10人の学生からいただく7,000円よりも、500円で14人の学生からいただく7,000円の方がトーコーキッチンにとって価値があると思ったからです。
どうしてでしょうか? それは、東郊住宅社の本業はあくまでも「不動産業」であり、トーコーキッチンはあくまでも「東郊住宅社が提供する入居者サービスの一環」だからです。
そこで、先ほどのつぶやきです。
2017年1月28日。不動産ポータルサイト「SUUMO」史上最高記録となる22,000「いいね!」を獲得したトーコーキッチン取材記事が掲載された3日後、さっそくTwitterで100円朝食をチェックし、自身が受けた強い衝撃を誰かに伝えたい願望がついに極限まで達し、そして、世の中に向けてつぶやいたのです。
それを見つけたボクは、すぐさま彼女にこう返信しました。
「深夜にも関わらず、熱い魂の叫びをありがとうございます。ご縁がありましたら、ぜひ東郊住宅社が管理する物件の入居者となっていただき、毎朝お召し上がりください!」
その後、トーコーキッチンのTwitterのフォロワーとなってくれた彼女。こまめに「いいね」をしてくれる、大切なトーコーキッチンファンの一人となってくれたのでした。
ところで、今現在、他の不動産屋さんの賃貸物件にお住まいの方は、引っ越しをしない限り、東郊住宅社の入居者になることはないのでしょうか?
答えは「ノー」です。
実は、トーコーキッチンをきっかけにして「淵野辺での暮らしがより楽しいものになった」「東郊住宅社に関わると何だか楽しい」と感じてもらえたらうれしい、というわたしたちの思いを叶えてくれる特別なケースがあるのです。
でも、それはまた別のお話。