3密を避けて新しい生活様式へ!

特集

まちさがのうか
#3 老沼幸彦さんのほうれん草

  •  
  •  

町田と相模原のおいしいものを紹介したい!農家応援団を自任する増田久美子さんが農家を訪ね、今、畑にあるものを料理する。

#3 老沼幸彦さんのほうれん草

町田市北部、多摩市との境にある上小山田町。「お寺の過去帳でうちの一番古い記録は秀吉が死んだ年」という、400年以上続く農家の老沼さん。谷戸の奥の傾斜地、見渡す限り自分の畑、という大きな農家です。かつて養蚕小屋だった作業場で、お話をうかがいました。

「昭和20年(1945年)生まれです。橋本の農業高校(相原高等学校)を出てからずっと、もう60年以上農業をやっています。うちは戦前は養蚕と米麦中心。私は高校で畜産も勉強したから、私の代になってからは養豚もやりましたし、あとはみつばとか。ずっと作っているのはほうれん草」

-----小山田のみつば、といえば、途絶えたと思われていたのが自生しているのが見つかって、最近「江戸東京野菜」に指定された「幻のみつば」ですよね?

「あ、小山田みつば、知ってる?田中庫三さんっていう人が始めたものだけど、このあたりでは戦前から作っていたの。傾斜地に横穴のムロを掘り、その中で育てていました。何軒か分をまとめて、私が青果市場に持って行きました。良い値が付いて」

-----高級ブランドだったんですね。

「そう。正月料理に欠かせないし、柔らかくって、おいしかった。みつばはある程度まで畑で育て、根株を掘り起こしてムロに移して植えなおし、伸びてきた部分を収穫するんです。だけど、やがて畑で連作障害が出たりしてうまくいかなくなり、ずいぶん工夫したけど、やがてあきらめました。育てるのに手がかかったし、料理をする人も減ったのか、消費量も減ってきてたから」

-----さいごは昭和40年代でしょうか。

「そう、昭和40年代の終わりごろかな。このあたりの養蚕も同じころに消えてったね」

-----今は畑中心ですか?

「うちは全部で7反、谷戸田は盛り土をして全部畑にしました。昔とは環境が変わってきちゃったから、田んぼもやりにくくなってね」

-----一番変化したのはどのあたりですか?

「このあたりは里山なんです。里山ってわかりますか?傾斜地の林と小川と田んぼ。林の樹は、昔は11~12年おきに伐って、薪炭にする、伐ったところからまた芽が出て生えてくる、樹が大きくなりすぎないうちに手を入れるし、林床もきれいに保てる、林の周囲にも日が差す、ということを繰り返していたわけ。うちも昔は炭を焼いていたし、薪にしたりね」

-----『萌芽更新』ですね。

「そう。だけど今は周囲の林の手入れができてないんだよ。うちの周りも自分ちの林だけじゃないから。あと竹ね。竹も茂りすぎるとタケノコも採れない。日当たりが悪くなって、水の出方も変わった。気候も極端でしょう、暑すぎたり大雨が降ったり、今年の冬のように暖かかったり」

-----今畑の作業はおひとりで?

「私と家内、だったけど、家内はもうほとんどやらない。援農の人が一人、今は毎日2時間くらいきてくれます。20年くらい前からずっと同じ人に、『たがやす』っていうNPOを通して有償ボランティアとして来てもらっています」

-----栽培方法のこだわりなどは?

「有機栽培の認証は取っていません。適時適作、ほうれん草なら今頃できるように育てれば、農薬なんて本来必要ないの。時期を無視して作ると、農薬使わなきゃ、やってられないけどね。設立から50年関わっている生活クラブの基準は守っています。これは日本農林規格の1/10で厳しいんです」

-----農業を続けていて、今感じるのはどんなことでしょうか?

「野菜が安すぎる。50年前40円~50円だったほうれん草の出荷価格が今110円。物価の変動を考えてみて。50年だよ。庭先販売でなくちゃんと出荷しようとすれば、袋代、配送用の段ボール、人件費、そして運賃がかかる。利益なんてわずかだよ。うちは南多摩地区では、面積も広いし比較的いいほうだと思うけど、息子に跡を継げとは言わなかったな」

-----予定の時間の倍くらいになってしまいました。お忙しい中、ありがとうございました。

「こうやって話してみると、60年、いろんなことやってきたなぁ、ほんとに」

老沼幸彦さんから、ほうれん草を分けていただきました。ほうれん草の特徴である赤い根元は甘くておいしいところ。よく洗って、落とさずまるごと食べて下さい。

今回の料理「ほうれん草と新玉ねぎのパイなしキッシュ」

用意するもの 直径22㎝くらいの型、ほうれん草1/2束、新玉ねぎ1/2個、厚切りベーコン1~2枚、シュレッドチーズ50g、粉チーズ大さじ1、牛乳100㏄、生クリーム100㏄、卵2個、あればドライトマト1~2枚、オリーブオイル(またはサラダ油など)大さじ1、あらびき胡椒適宜(写真はパイ生地を使用しています)

新玉ねぎは皮をむいて上下を落とし、縦半分に切って繊維に沿って薄切り、フライパンにオリーブオイル大さじ1を入れて炒める。バットに広げて冷ます。

型にオーブンシートを敷き、オーブンは180度に予熱する。

ほうれん草はしばらく水に放し、ざっと洗って土を落とし、根元が太ければ2つ~4つに割って根元の土を落としながら流水で洗い、水気をつけたままぴったり蓋のできる鍋に入れる。中火にかけて湯気が上がったら一度蓋を開けてほうれん草の上下を返し、また蓋をして弱火にし、30秒ほどおいて火を止める。そのまま30秒ほど蒸らしてから冷水にとって絞る。2㎝くらいの長さに切る。

ベーコンは1㎝幅に、ドライトマトは粗くみじんに切る。

ボウルに卵を割り入れ泡立てないようにほぐし、牛乳、生クリーム、粉チーズを入れてさらに混ぜる。

5のボウルに1と3と4を入れてざっと混ぜる。

型に流し入れてあらびき胡椒を振り、シュレッドチーズを散らす。

予熱したオーブンで40分焼く。真ん中あたりに串をさしてみて、何もついてこなければ焼き上がり。まだだったら10分くらい追加で焼く。

熱いうちは崩れやすいので、切り分けるときは冷ましてから。

【プロフィール】
増田久美子:町田市に住んで25年。農産物の販売の仕事で、北海道から沖縄まで、農家を回ってきました。地元と深く関わってみれば、あらら、町田・相模原って、農家がたくさんいるじゃありませんか!地元の農家ともっとお近づきになりたいと、農家を訪ね、お話を聞き、料理して食べて、コラムに書いてみることにしました。野菜ソムリエプロ、食の6次産業化プロデューサー、まちだ里のマルシェ実行委員会代表
★まちだ里のマルシェ vol.6開催、2020年5月16日(土)10:00~14:00
農村伝道神学校グラウンドにて。町田市内とその周辺のおいしいものが集まる、とてもローカルなマルシェです。町田の農家を中心に、厳選した材料でていねいに作った加工品の作り手が出店します。ドラム缶窯ピザ焼き体験、ライブ演奏、ひつじのえさやりなど。現在、開催準備を進めています。今後の状況次第では変更になる可能性もあります。最新情報はFBまたはinstagramでご確認ください。
https://www.facebook.com/machidamarche/
instagram ID:machidamarche
  • はてなブックマークに追加