文教地区・淵野辺にあるちょっと変わった食堂。入りやすそうでいて、鍵がかかっていてトビラが開かない。なぜ、こんな場所が誕生したか?「まちの不動産屋さん」2代目が、ここを舞台に巻き起こる人間模様を語る連載コラム。
淵野辺で創業45年となる不動産屋の二代目、池田峰です。日本で一番「味どう?」と聞いている不動産屋です。当社、東郊住宅社が運営する入居者向け食堂「トーコーキッチン」にまつわるエトセトラをお話しさせていただきます。
ある日、こんなつぶやきを見つけました。
トーコーキッチン体験を楽しんでくださっている様子がひしひしと伝わってきます。
彼女はいったいどうしたというのでしょうか?
鍵がないと入店できないトーコーキッチン。そんなちょっと変わった食堂は店内に入ってからも、ちょっと変わった(?)ポイントがいくつかあります。
注文は店内に設置されたオーダーシートに記入していただきます。続いて、レジで支払い、カウンター越しに提供される料理を受け取っていただくという流れです。セルフサービスのカフェテリア方式です。これは、(1)注文(2)支払い(3)配膳というタイミングで、入居者のみなさんと自然なコミュニケーションを図りたいという思いからです。
そこで、先ほどのつぶやきです。
2016年4月10日。東郊住宅社が管理する賃貸物件に住んでいる友人に連れられて初来店した彼女は、自身のトーコーキッチンおもしろ体験を伝えたい願望がついに極限まで達し、そして、世の中に向けてつぶやいたのです。
それを見つけたボクは、すぐさま彼女にこう返信しました。
「可愛いって言ってもらえてうれしいです!」
通常は先述の通りセルフサービスのカフェテリア方式の流れなのですが、混み合っていたり、提供まで時間がかかるメニューのときなどには、レジ横に置いてある動物のフィギュアの中から好きなものを一つ選んでいただき、それを持って一旦席でお待ちいただきます。
一般的な飲食店ではこのような場合は番号札を渡されたりするかと思いますが、トーコーキッチンではその役割をこの動物フィギュアが担います。「ひつじさんのお客さま~」「ミーアキャットでお待ちのお客さま~」といった感じでお呼びして、食事を受け取りにカウンターまで来ていただいています。
実はこれ、ボクが好きだったニュージーランドのカフェが番号札替わりに動物フィギュアを使っていたのを思い出し、真似させてもらっています。そのカフェではお客さまを動物名では呼んだりはせず、動物フィギュアをテーブルに置いて目印として使っていたのですが、コーヒーが運ばれてくるまで動物と共に過ごすシュールでほっこりした時間が好きでした。
動物名を呼ばれて食事を取りにくるトーコーキッチンご利用のみなさんは、なんだか楽しそうなご様子です。このようにして、トーコーキッチンでは利便性と健康的な食生活だけでなく、クスッと笑ってもらえるようなひとときも提供できたらうれしいなと思っています。
ところで、不動産屋の仕事は住まいの場を提供したら終わりなのでしょうか? そこでの暮らしがより楽しいものとなるように携わることはできないのでしょうか?
答えは「ノー」です。
実は、そこにトーコーキッチンを介して描く、わたしたちが望む未来があるのです。
でも、それはまた別のお話。