まちづくりのためのアートの活動拠点「アートラボはしもと」(相模原市緑区大山町)が4月1日、ショッピングセンターアリオ橋本の隣接地にオープンした。
相模原市美術館検討委員会が2009年に市長へ提出した提言書に基づく同施設。企業や大学との連携で文化振興や産業振興などにつながる事業を企画・実行し、市全域を文化芸術創造都市として性格づける「まちづくり」の役割を担うとともに、開設を検討している市立美術館の計画にラボの取り組みを生かす考え。
ラボの開設にあたって、市は女子美術大、桜美林大、東京造形大、多摩美術大と協定を締結。事業推進協議会を設置し、人材や専門性を活用した運営を行う。既設の相模原市民ギャラリー(中央区相模原1)との役割分担を図り、市民ギャラリーは展示スペースに特化。ラボはワークショップやまちづくり活動を実践する施設とした。
土地は日本金属工業から、建物は三菱地所レジデンスから譲渡を受けた。マンション販売センターを「居抜き」で活用する施設の面積は約1800平方メートル。もともとあった展示スペースやスタジオ、上映設備、モデルルームを創作活動や作品展示、各種講座の開催、バックヤードなどに利用する。
「近隣の複数の美術系大学と連携し、このような建物でアート活動を展開するのは日本初の取り組み」とラボの柳川雅史所長。「橋本駅周辺は日本一と言えるほど多くの美大生が住む街。ラボは美大生が『自分が人のために何をできるのか』を考え、将来の仕事に役立つようなプロジェクトを行う実験的な場としたい」と話す。
市民ギャラリーが約10年に渡って実施した、学生が展覧会の企画・運営を体験するワークショップ「エキシビション・プログラム」の成果がラボ開設にあたって役立ったと説明する。「プログラムに関わった若手スタッフが開設に向けて熱心に働いた。作品設置の環境も彼らが自ら整えている。幅広いネットワークがオープニング記念事業でも大いに生かされた」
5月3日から開催するオープニング記念事業「はじめましてアートラボ」では、相模原ロータリークラブが資金を提供した7つのプロジェクトを紹介する。延べ100人の若手作家や美大生が市内4小学校で実施した制作ワークショップによる作品「思い出アニメーション」や「未来下駄箱」など4作品のほか、版画家で東京造形大学非常勤講師の佐竹宏樹さんは同ラボの巨大なガラス面を花柄の家族の肖像で埋め尽くす公開制作とワークショップを実施。
ライトアーティストで多摩美術大学准教授の森脇裕之さんは、吹き抜けの暗室を活用し、アルミホイルで包んだオブジェクトに照明を当てるワークショップを行う。花の生産者と生花店、東京音楽大学の学生で構成する「NPO法人はなかなぐみ」はエントランスでフラワーアートと演奏会、フローレストによるパフォーマンスを披露する。
「地元の人に学生を応援してもらいたい。学生がプロとして活躍すれば、地元の人は誇りに感じるはず。街のPRにもつながる。『当ラボはみんなでつくり上げていく場』ということを示す記念事業にしたい」と来場を呼び掛ける。
開館時間は8時30分~17時15分。水曜休館。入場無料。記念事業は6月24日まで。