東京都は5月19日、希少種の「ホシザクラ」が群生する町田市片所(かたそ)谷戸の一部を施行地区とする土地区画整理事業の組合設立を認可し、開発事業が始まった。
片所谷戸は多摩境駅から約500メートル離れた約3.6ヘクタールの斜面緑地。中央を流れる川にはカワニナやゲンジボタル、ホトケジョジョウが生息するほか、オオムラサキなどの希少生物も確認されている。町田市は都市計画マスタープランや緑の基本計画で、同エリアを緑地や公園として保全することを方針に掲げている。
「地権者が宅地利用を望んだので、町田市は土地を買い取れなかった」と地区街づくり課の担当者。谷戸のうちカワニナやゲンジボタル、ホトケジョジョウが生息する小川が流れる約7000平方メートルのエリアは市が京王電鉄から買収した。「ホシザクラの多くは市が買収したエリアにあり、自然は守られると考えている」と説明する。
開発地の面積は約3.1ヘクタール。低層住宅街として、幅4~6メートルの区画道路を整備。市が買収した都市緑地の予定地に接して公園・緑地(約2470平方メートル)を配置する。
同谷戸の保全活動に取り組む「小山のホタルと自然を守る会」の柿澤澄夫さんは「施行区域内にもホシザクラが4本自生している。生物が生息するために必要な水に影響が出ないか心配している」と話す。
自然環境への影響を評価する東京都の環境アセスメントは、同施行区域の面積が小さいために対象外としている。市担当者によると、開発による影響は現時点では分からないのが実態といい、ホシザクラの場所は現場で確認するなど、地元の人と開発事業者が協力して事業を進めてほしいと考えている。
谷戸では一昨日からゲンジボタルが姿を見せ始めたという。柿澤さんは「開発は残念だが、これからも保全活動に取り組んでいく」と意欲を見せる。