谷戸にニュータウンができるまでの軌跡を描いた絵本「やとのいえ」(偕成社)が7月20日に出版された。
谷戸(やと)は浅い谷が低い丘のあいだに入り組んでいる地形。同書は、町田市を含む多摩丘陵をモデルに明治時代初期~現代までの150年間の人々の暮らしの変化を、一軒の農家の定点観測から描く。
著者の八尾慶次さんは1973年、相模原市橋本生まれ。ボローニャ国際絵本原画展に入選した作品「羅漢さん」が、町田市鶴川で育った編集者の目に留まり、「団地の歴史」と組み合わせる企画を時代考証を含めて6年かけて作品化した。
物語は里山が開発されていく様子を十六羅漢が見つめ続ける。「大胆に言ってしまえば、バージニア・リー・バートン『ちいさいおうち』の日本版」(編集者)。稲作や麦作などの農作業、使われている農具、村の習俗や人びとの様子などの解説が巻末に付く。
「子どもたちには、いま自分が立っている土地にかつて、どんな人が暮らし、どんな生活が営まれ、どんな大地であったのかを知ってもらいたい。なにかしら知的な刺激、興奮を感じてもらえるとうれしい」(編集者)
対象は小学校中学年から。仕様はサイズ22×31センチ、40ページ。価格は1,800円(税別)。