FC町田ゼルビアが12月12日、J2昇格を決めた。J基準スタジアムが未完成の状態でのJリーグ入会申請だったが、行政と市民の支持がJリーグ臨時理事会で「異例」として認められた。クラブ創設23年目、「少年サッカーのまち」のトップチームがついにJリーグにたどり着いた。
町田市役所で行われた入会審査の結果報告会見には、石阪丈一市長、ゼルビアの下川浩之社長、津田和樹主将が出席。16時35分、大東和美チェアマンから電話を受けた下川社長は「Jリーグチームに恥じないよう、精いっぱいやっていきます」と応えて電話を切ると、会場から大きな拍手が湧き上がった。
その後の会見で、下川社長は「ほっとした気持ちでいっぱい。チェアマンからは、3年続けての赤字決算を黒字化するように言われた。また、ゼルビアのように市が協力し、市民と一体化しているチームはこれまでになく、Jリーグからも注目されているという話もされ、身が引き締まる思い。競技場が完成していない中、メディアセンターをつくるという条件で異例として認めたという話もあった」と話す。
石阪市長は「ライセンスの上から言えば、Jリーグ基準のスタジアムが『現存する』ことが昇格条件となるが、1年前倒しの形で認めてもらうことができた。チェアマンと役員の英断にあらためて感謝を申し上げたい」と喜びの表情を浮かべた。
津田主将は「選手一堂ほっとしている。ポポヴィッチ監督の下、パスサッカーを追及してプレーしてきた成果。それと同時にこれまでにゼルビアに関わってきた選手がいなければ、Jには上がれなかった。全員で勝ち取ったJリーグ昇格。来年はJリーグチームに恥じないプレーをして、J1という次の目標に向かっていきたい」と顔を引き締める。
J2には来年からJFLへの降格制度が導入される。下川社長は「鳥取や北九州などJFLから上がったチームは1年目に、JFLで頑張った選手をJでなるべくプレーさせることがあったと思う。ただ、それで実際に勝てるかというと、そんなに甘くない。プロの世界だから厳しい判断をしないといけない。そうなると、資金が問題になる。これからは東京3つめのクラブとして町田の企業だけでなく、東京の大きな企業などにも営業して資金を集めていきたい。高望みをして強くするというのは、お金があればできると思うが、それでは一瞬で終わってしまう。子どもの成長が何年もかかるように、一歩一歩着実にやっていきたい」と説明する。
不便との指摘もある町田市立陸上競技場へのアクセスについて、石阪市長は「早めに新しいアクセスルート、増便などをバス事業者と話し合っていきたい」と対応を明らかにした。
ゼルビアのJ2昇格を受けて、町田駅周辺ではサポーター約20人が朝日新聞の号外1500部を配布した。受けった50代男性は「スタジアム問題で2年間、昇格を認められなかったので気になっていた。町田にJクラブができるのは良いこと。スタジアムには一度も行ったことはないが、機会があれば試合を見たい」と話していた。