特集

佐々木宏人のニューウェーヴで行こう!
#005 CDを作っています

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#005 CDを作っています

もうすっかり寒いですね。
こんなタイミングで誕生日を迎えて47歳になりました。
数字的には忠臣蔵で討ち入りした赤穂浪士と同じですね。

同世代で寂しい思いをしているファンのみなさん、こんにちは。
佐々木宏人です。
先日相模原のラーメン屋さんでスイーツ真壁さんを見かけました。
スイーツ以外のものも食べるんですね。

前置きが無駄に長くなりましたが、私は普段ゲーム会社などのクライアントさんから依頼を受けて音楽を作っています。
そしてその曲がCD化されることも少なくありません。
CDが売れないと嘆かれる昨今ですが、本業の方のCDはタイアップや声優さんの知名度のおかげもあってそこそこ売れています。
それはそれでありがたいことですが、ただ一つだけ不満(って言っちゃうと問題発言かな?)があります。
当然ながらクライアントさんの意向を受けて曲を作ることが多いので、どうしても自分のやりたいこととずれが生じてくるのです。

それともう一つ、仕事のCDは完全にお膳立てされた状態で作られるので、自分は「曲」を作っているだけで「CD」を作っているという実感が薄いのです。
誰でも初めて自分が関わった曲がCD化されると感動するものですが、2枚め、3枚め…n枚めとなるごとに着実に感動は薄れていきます。
たぶん5枚め以降は限りなく0に近づいて、あとは惰性で作って印税報告書を見るのだけが楽しみになります。
まあ、仕事としてはそれでもいいのでしょうが、自分は納得できません。

ということで、自然な流れでCDを自主制作するようになりました。
CDを自分で作るというのは、費用の捻出、演奏家やエンジニアの手配、デザイナーの手配、スケジューリング、レコーディングスタジオの予約などなど…。
プロデュースの三大原則である「金、日程調整、交渉」を一身に背負った上に、音楽、デザインのディレクションまでやらないといけなくて実は結構大変なんです。
背中にカーディガンを羽織って「~ちゃーん、ザギンでシースーかグーフーでもどう?」とか言っている精神的余裕はなくなります。
さらに楽曲制作までやるので、生きているのがやっとという状態になります。
本来はそういうことを分担しながらやっているのですが、全部自分でやってみるといろいろありがたみがわかります。

おかげで、やり遂げると達成感がすごくて「あしたのジョー」のように燃え尽き症候群になりそうです。
よく「出産の大変さは男にはわからない」と言われますが、男の自分でも出産の疑似体験ができます。
お腹を痛めて産んだ子はみんな可愛くて、CD1枚1枚が愛おしく、輝いて見えます(実際輝いています)。
そして産んだ子はちゃんと育てて社会に送り出さないといけません。
人間でいう就職に当たるのが「販売」です。

それこそライブの時に手売りするのが一番効率的なのですが、他にも音楽系のイベントに出店するのも効果があります。
意外にも一番規模の大きい音楽系の即売会はコミケで、次がM3という音楽に特化した即売会です。
ということで、画像はつい先日参加したM3-2016秋の模様です。
こんな感じで地味に売っていますが、地味過ぎてあんまり売れません(ぎゃふん)。

手売り以外にも「ディストリビューター」と呼ばれる流通業者にお願いして、全国のCDショップなどに置いてもらう方法もあります。
我がMalicetic Lolitaはダイキサウンドというゴールデンボンバーで儲かっているディストリビューターと契約しています。
これが実は簡単な話ではなく、まず契約するためには審査がありますし、手数料が意外に高いですし、契約しても店頭に置いてもらえる保証はありません。
運良くMalicetic LolitaのCDは審査を通って新宿のタワレコなどに置いてもらっていますが、販売数は芳しくありません(ぎゃふん)。
まず店頭に置いてもらうまでに高いハードルがあって、さらにそこからお客さんに手に取ってもらうまでにさらに高いハードルがあります。
ちなみにディストリビューターとレコード会社の大きな違いは宣伝してくれるかどうかです(実はレコード会社でも自主制作CDのディストリビューションをやっていたりしますが、自社所属のアーティストしか宣伝してくれません)。

実は手売りにしても全国流通にしても宣伝が大切で、どんなにいいCDを作ってもちゃんと宣伝をしないと売れないということを実感しました。
逆にどんな内容のCDでも宣伝が上手であればヒットするようです( 大きな声では言えませんが)。
ついでにインディーズならではのフットワークの軽さを生かして先進的に配信もやっていますが、世間の予想通りこちらも微々たるものです。
楽曲を作るのは仕事柄そんなに難しくないのですが、楽曲を売るのは本当に難しいですねえ。
わざと難しく表現すると、コンテンツのマネタイズはベリーディフィカルトです(ルー大柴かよっ!)。
こういう大変さは実際に自分でCDを作ってみないと見えてこないものです。

そんなわけで、町田経済新聞さんのコラムを私的利用して宣伝しちゃってるんですが、それでもきっと売れないんでしょうねえ…。
一攫千金なんてのは端から狙っていなくて、我が家の在庫と大赤字を少しでも減らすために、そして次の創作活動への糧となるように日々頑張っています。
CDが売れるというのは金銭的な意味でも助かりますが、それ以上に「自分の作品が多くの人に評価されている」という満足感に繋がります。
それが次の作品作りへの原動力になるのです。
まあ、売れなくても頑張るんですけどね。

とりあえずSpotifyのURLでも貼っておきますんで、試聴でもしてみてください。
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Androidはこちら

今回は全文が見え見えなダイレクトマーケティングで失礼致しました。
では、また。

【プロフィール】
バンダイナムコゲームス(現バンダイナムコエンターテインメント)のサウンドクリエイターを出発点に2008年からフリーランスの作編曲家へ。代表作「アイドルマスター」はプロジェクト最初期から 参加して音楽プロデュースを手掛け、まったくゼロの状態からヒット曲量産コンテンツへと導いた。2013年本来やりたかった音楽をやるためにMalicetic Lolitaを結成。可愛いものが大好き。趣味はTポイント集め。http://maliceticlolita.net/
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