特集

ここにはたしか!
♯024 栄通り商店街、モリマチスポーツ、ニシノ洋菓子店

  • 74

  •  

町田在住のライター&編集者の多田洋一さんが、「町田のちょっと懐かしい」を訪れ、今はなき店や出来事に思いをはせる、ゆるノスタルジー系連載。

♯024 栄通り商店街、モリマチスポーツ、ニシノ洋菓子店

こんにちは、多田洋一です。本に関わる仕事をしていて、町田市在住。さて、ここ数回は山下達郎話の流れで竹内まりやについて書きましたが、彼女の歌で印象に残っているのが、アルバム「VARIETY」のラスト曲「シェットランドに頬をうずめて」。恋人と2人、冬の田園でバカンスを過ごす女が暖炉の前で「世界にただひとつだけの愛のしるし」であるシェットランド・セーターを編みながら幸せを噛みしめているんですが、私には、ただひたすら恐い。「夢の日々が編み込まれて 素敵な色になってゆく」...恐いよ~。そんなセーターもらっちゃって、それを着て外に出かける勇気、自分にはないし(...って、もらったことのない人間のひがみ、でいいんですけど)。個人的には平松愛理の「部屋とYシャツと私」と同系のホラーソングです。

写真は小田急線「町田」駅北口にある栄通り。私はむかしからここ発のバスを使っていまして、ほんと、風景が変わりましたですよ。右端の「新光商事」の場所は、たしか蕎麦屋(朝日屋?)。でっ、その隣の薬局のあたりにはホカホカの都まんじゅうを売る店があって、いつもいい匂いがしてた(ずっと町田名物だと思ってたけど、あらためてネット検索するとけっこう謎深い食べものでびっくり!)。自転車のスギイサイクルはむかしのまま、そしてちょっと奥に引っ込んじゃったお酒の豊國屋商店は、かつては通りに面してて、いわゆる「角打ち」ができたはず。スルメ片手に立ち呑みしてるおじさんで賑わっていた記憶が...。さらに踏切のほうへいって、いまはイタリアンのオステリア 3903のところ、2010年11月までは新星堂タハラ(タハラ 町田店楽器)でしたよね。学生時代、ここのスタジオでも練習したことがあった。森高千里の「非実力派宣言」はここで見つけて「...こんな人になっちゃったんですか!!」と目眩しながら買った。。

通りの反対側。近年はいつも蒙古タンメンの行列ができているあたりに、モリマチスポーツがあったはず。なぜか小中学校の体操着はここで買うこと、という決まりがあって、記憶が曖昧なんですが、たぶん高校の制服もここだったんじゃなかったっけ(違ってたかも...)。なんというか、町田で本なら久美堂、文房具ならなかじま(近所で評判の美人女子が地元就職した)、運動用具ならモリマチ、みたいな時代があったのです。そして、私がいまも週に何度か立ち尽くしているバス停の向かいあたりには、1990年頃までかわいらしいケーキ屋さんがあったのでした。たしか、ニシノ洋菓子店という名前だったはず。いまもあれば、相模原市南区古淵のヒロセ洋菓子店や横浜市青葉区桜台のメイプル洋菓子店みたいな、老舗感のある人気店だったかも。

でっ、なんでそのケーキ屋さんのことをよく覚えているかというと、じつは、お菓子の思い出とともに、店正面の外壁に設置してあった時計のことが忘れられません。...この時計、バス停で待ってる人たちはたぶん、内心「神奈中今日も遅ぇ」と苛立ちつつチラチラ見てたんだと思うのです。いや、もちろん腕時計を見れば事足りるんですが、そこまでのアクションを起こすでもなく、チラ見しては「遅ぇ」と舌打ち、みたいな態度が共有されていたはずで、でっ、洋菓子店の時計は、そんな個々の心理をひとつにまとめるトリガーとしての公共的役割を担っていたはずなのでありまです...って大袈裟過ぎw。あっ、でも私はいまでも第一踏切で延々待たされると、POPビルの脇に飛び出しているSAKAE DORIの鈴のついた時計、チラ見してますが、なにか(これがときどき狂ってたりして)。

世の中がバブルになったころ、そのケーキ屋さんが閉店。跡地は某電鉄系不動産会社の事務所になりました。ほどなく、電池切れなのかその時計は停止。その後は、再び時を刻むことなくずっ~と放置されていました。数年でバブルは崩壊しましたが、でも、バスを待っていると、つい習慣でその止まりっぱなしの時計をチラ見してしまい、そのたびに「ああ、あの会社の人たちは街づくりみたいな宣伝してるけど、自分んとこの客以外には全然関心がないんだなぁ」と、脳内企業イメージが下がりまくり。いまはその事務所もありませんが、当時あそこで働いていた人たち、ほんとに時計のことを誰も気に留めなかったのかと、ときどき蕎麦の出汁や都まんじゅうやケーキやスルメや日本酒の匂いが渦巻く記憶のなかで時計のことも思い出すのでありました。栄通り近辺のこと、まだ書き足りないので引き続き次回もいろいろ思い出してみようと思います!

【プロフィール】
多田洋一(ただ・よういち)
フリーランスのライター&編集者。雑誌での取材や映画/テレビドラマのノベライズ等。2010年より年1回、個人主宰の文芸創作誌「ウィッチンケア」を発行。第10号は2019年4月1日に発行予定!
http://witchenkare.blogspot.com/
  • はてなブックマークに追加
エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース