特集

トーコーキッチン物語
#048「妹とトーコーキッチン」

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文教地区・淵野辺にあるちょっと変わった食堂。入りやすそうでいて、鍵がかかっていてトビラが開かない。なぜ、こんな場所が誕生したか?「まちの不動産屋さん」2代目が、ここを舞台に巻き起こる人間模様を語る連載コラム。

#048「妹とトーコーキッチン」

淵野辺で創業46年となる不動産屋の二代目、池田峰です。日本で一番「味どう?」と聞いている不動産屋です。当社、東郊住宅社が運営する入居者向け食堂「トーコーキッチン」にまつわるエトセトラをお話しさせていただきます。

ある日、こんなつぶやきを見つけました。
トーコーキッチンを堪能してくれた様子がひしひしと伝わってきます。
彼女はいったいどうしたというのでしょうか?

前回もお話しした通り、トーコーキッチンはわたしたち東郊住宅社が管理する1,800室の賃貸物件に入居しているみなさんのための特別な食堂です。入居者のみなさんが自室に入るために使っているカードキーでのみ開くドアが食堂入口に設置されているからです。

つまり、店内に入るには入居者が持つ専用のカードキーが必要になるわけですが、実は特例も設けています。それは、カードキーを持っている当社管理物件入居者と同行すれば、どなたでも、何名でも、何回でもトーコーキッチンをご利用いただけるという特例です。

そこで、先ほどのつぶやきです。

2020年8月15日。コロナ禍のお盆休みということで、街がいつも以上にひっそりと静まり返っていた頃のことです。離れて一人暮らす妹の様子を見に来てくれたのでしょう。妹と共にトーコーキッチンを訪れた彼女は、自身のトーコーキッチン体験を伝えたい願望がついに極限まで達し、そして、世の中に向けてつぶやいたのです。

それを見つけたボクは、すぐさま彼女にこう返信しました。

「ありがとうございます。妹さんをお訪ねの際には、ぜひまたご利用ください!」

トーコーキッチンの日常は入居者のみなさんで賑わっているのですが、ご家族単位の利用で賑わいを見せる特別な時期があります。それは、年末年始や春休み、ゴールデンウィーク、夏休みなど、学生のみなさんの長期休暇がある時期です。

実家に帰省するためのお迎えで来たときや、実家から送り届けに来たときなどに、トーコーキッチンに一緒に来店して、ご家族揃っての食事を楽しんでくださるのです。

「実はいつもSNSでメニューチェックしていているんですけど、いつもおいしそう食べてみたかったんです」「この環境が羨ましくって、私の学生時代にもこういう食堂があったら良かったのにと思うほどです」「こんなにちゃんとした手づくりのごはんを食べさせてもらえているので本当に安心しています」なんてお言葉をいただくこともしばしば。

それらのお言葉も当然とてもうれしいのですが、家族揃っての貴重な時間のひとときをトーコーキッチンで過ごしてもらえているということが格別にうれしく感じられ、その光景を見かける度に「トーコーキッチンを始めて本当に良かった」とつくづく思うのです。

ところで、入居者以外の利用者はどんな時にトーコーキッチンを利用するのでしょうか? やっぱり入居者に誘われたときだけなのでしょうか?

答えは「ノー」です。

実は、わたしたちが想像していた以上にトーコーキッチン利用方法の特例を楽しく有意義に活用してくれている方々がたくさんいるのです。
でも、それはまた別のお話。

【プロフィール】
池田峰(いけだ・みね)
有限会社東郊住宅社の二代目。管理物件1,600室の賃貸住宅入居者に向けた食堂「トーコーキッチン」を企画し、2015年12月より運営。毎日、朝食100円&昼・夕食500円で絶賛提供中。2016年度グッドデザイン・ベスト100およびグッドデザイン特別賞[地域づくり]受賞。幼い頃のぬり絵は間取り図。 東郊住宅社HP
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